管理人は断酒をしている。
理由は自分がアルコール依存症だと知っているからだ。過去にアルコール依存症外来で診断を受けたことがある。にもかかわらず最近まで飲酒を続けていたのは、やはり依存症なのだろう。幾度かの問題行動を経て、やっと断酒に至った。
アルコール依存症は自己診断できない。スクリーニングテストという簡易テストで傾向を知ることは可能だが、それをもって「自分はアルコール依存症です」とはならない。
あなたがアルコール依存症かどうかは、医師が診断するということをお忘れなく。
もし、自分がアルコール依存症の疑いがあり、それでもまだ治療を受けていなくて、この記事を見ているのであれば、是非とも記事内の情報を参考にしてアルコール依存症治療の第一歩を踏み出してほしい。
なお、アルコール依存症までいかなくとも、「多量飲酒」や「アルコールの有害な使用」に該当する方も、医療支援の対象になりうるので、是非とも読み進めてほしい。
- アルコール依存症は身近な存在
- アルコール依存症の診断基準
- アルコール依存のスクリーニングテスト
- 適度な飲酒とは?
- なぜ飲んでしまうのか
- アルコール依存症の人の心理
- 「酒乱」の話
- アルコール依存症治療「断酒」と「減酒」
- アルコール依存症で受診する
- アルコール依存症の薬
- あとがき
- 主な参考書籍・サイト
アルコール依存症は身近な存在
世間のアルコール依存症に対するイメージは、画像のような末期的患者である場合が多く、それゆえにアルコール依存症の治療開始になかなかつながらない現実がある。画像のイメージはあくまでイメージ。この通りになってしまう人もいるけれど、多くは社会生活を営む人の中に紛れた、一見は普通の方ばかり。もしかすると、あなたも該当するかも。
アルコール依存症は患者数が100万人を超える身近な病気である。にもかかわらず、治療を受けているのはそのうち1割だけ。では9割は治療が必要ないのかというと、そんなことはない。放置していると、各種健康被害はもとより、社会的に大きなミスをしたり結果的に犯罪になってしまう場合もある。卑近な例では飲酒運転などだ。
アルコール依存症の症状
- 飲酒への強烈な欲求
- 耐性がついて飲酒量が増える
- 量のコントロール不能
- いやなことを忘れるための飲酒
- 離脱症状・禁断症状
- 飲酒が生活の中心に
- 禁酒後も一口で再発の危険
以上が複合的に表れ、悪循環的に飲酒のコントロールを失う。なお、これらの症状はたばこ、ギャンブルなど他の依存症にも当てはまる。
アルコールは依存性のある薬物の一種です。飲酒を続け、耐性・精神依存・身体依存が形成され、飲酒のコントロールができなくなる状態がアルコール依存症です。アルコール依存症になると、身体・仕事・家族関係などの様々な問題が起きます。
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-05-001.html
アルコール依存症の診断基準
診断基準は「ICD-10」と「DSM-5」の2種類が主である。
アメリカ以外の国の医療現場では、おもにICD-10による「依存性物質に対する依存症候群を扱った基準」が使われている。
日本国内でも診断の際はICD-10を基準としていることがほとんどである。
ICD-10
1年以内に6項目中3項目以上で該当。
DSM-5
アルコール依存のスクリーニングテスト
CAGE
簡単だが精度高し、敏感度77.8%、特異度92.6%*1
AUDIT
WHOがスポンサーとなって作られた検査で国際的に幅広く使用されている。
KIRIN公式サイトでAUDITを受けられる
↑ここでAUDITを受けることができる。
管理人のAUDIT結果
当記事執筆時は断酒しているが、その前に飲酒していた時期でスクリーニングテストをしてみると
- 1-4
- 2-4
- 3-3
- 4-2
- 5-2
- 6-0
- 7-2
- 8-2
- 9-4
- 10-4
total 27
ぶっちぎりで、医療機関の受診が必要なレベルだった。
スクリーニングテストの位置づけ
- 簡単な質問に答えるだけで短時間に結果が得られる
- 専門家でなくとも実施可能
- 早期介入や予防に役立つ
という特徴がある。
注意してほしいのはあくまでも簡易検査であり、医師による診断とは異なるものということ。
自己診断で物事を進めると危険なことが多い。もし、スクリーニングテストの結果で不安があるならば、アルコール依存症外来のある病院を受診し、医師の治療を受けることをお勧めしたい。
適度な飲酒とは?
厚生労働省の示す指標では、節度ある適度な飲酒は1日平均純アルコールで20グラム程度の飲酒ということになります。また女性や高齢者、飲酒後にフラッシング反応を起こす人は、これより飲酒量を少なくすべきであると推奨しています。これらのガイドラインと既存のエビデンスから、健康を守るための12の飲酒ルールを提案します。
12の飲酒ルールは以下の通り
- 飲酒は1日平均2ドリンク以下
- 女性・高齢者は少なめに
- 赤型体質も少なめに
- たまに飲んでも大酒しない
- 食事と一緒にゆっくりと
- 寝酒は極力控えよう
- 週に2日は休肝日
- 薬の治療中はノーアルコール
- 入浴・運動・仕事前はノーアルコール
- 妊娠・授乳中はノーアルコール
- 依存症者は生涯断酒
- 定期的に検診を
各ルールの詳細は飲酒のガイドライン|e-ヘルスネットを参照のこと。
1日20gの純アルコールとはどの程度の量なのか。
以下計算式
500(mL) × 0.05 × 0.8 = 20(g)
酒の量(mL) × 度数または% / 100 × 比重 = 純アルコール量(g)
図で見るとわかりやすい。図の量の2倍を超えなければ節度ある飲酒といえる。飲酒量の適量は1日2ドリンク、ということになる。
ビール中ビン2杯を超える飲酒で「節度ある飲酒」が破られるわけだから、盛り場の居酒屋で老若男女がいかに節度を守らず飲酒しているかがわかる。
飲酒後の酔い現象として段階的には
- 爽快期(適量内の飲酒)
- ほろ酔い期(血中濃度0.05%~)
- 酩酊初期
- 酩酊期
- 強い酩酊(血中濃度0.3%~)
- 昏睡期(血中濃度0.4%~)
- 死亡
となっており、最初の「爽快期」で止めなければ節度ある飲酒はままならない。
なお、管理人は幾度となく「ブラックアウト」を繰り返しており、これは「強い酩酊」の段階で起こる。間もなく昏睡期に近いところにいた、と思うと我ながらゾっとする。
夕食時のおともにビールを中ジョッキで2杯程度嗜んだあとは、それ以上を飲まずに床につく、というのが節度ある飲酒の一例。
適量を超えるデメリット
皆さんは経験則でデメリットをご存じとは思うが、その経験以上に恐ろしいリスクが潜んでいることは意外と意識されていないように思う。
WHOによるとアルコールは200種類以上の健康被害を引き起こし、「有害な使用」により年間300万人が亡くなっているという推計を出している(2018年)。
- 急性アルコール中毒→詳しく知る
- 肝臓病→詳しく知る
- 膵臓病→詳しく知る
- 循環器疾患→詳しく知る
- メタボリックシンドローム→詳しく知る
- うつ、自殺→詳しく知る
- 認知症→詳しく知る
- 癌→詳しく知る
- 歯科疾患→詳しく知る
- 消化管への影響→詳しく知る
- アルコール性肝炎と非アルコール脂肪性肝炎→詳しく知る
- 痛風→詳しく知る
- 糖尿病→詳しく知る
- 高脂血症→詳しく知る
- 胎児性アルコール症候群→詳しく知る
※(詳しく知る)をクリックで厚生労働省|e-ヘルスネットの解説へ飛びます。
病気以外にも
- 事故
- 犯罪
- DV、虐待
- 社会的信用の低下
など様々なリスクがある。管理人は「社会的信用の低下」を招いた経験がある。
2012年の厚生労働省研究班の調査によれば、アルコールによる社会的損失は4兆1483億円にものぼるのだそうな。なんとも、目も当てられない惨状である。
なぜ飲んでしまうのか
- 酒を楽しむために飲む
- 耐性ができる
- 渇望・習慣化
- 飲酒量増大
- 連続飲酒や離脱症状
はやい話が「依存の形成」である。
ニコチンなどの薬物と一緒。飲めば脳内で快楽物質が放出されるが、使用を続けていると量が増える。そのうちに、取り返しのつかないところまでいく、という図式だ。管理人は4あたりまでいっていたように思える。さすがに連続飲酒や離脱症状は経験しなかったが...。
依存に陥ると周囲が止められない状況が起きる。
- お酒の害を認めなかったり
- 飲酒やトラブルを他人のせいにしたり
- 隠れて飲んだり
- 孤立したり
などの理由により、本人も止められないまま、病態が進行するケースが多い。
職場のアルコール依存のおじさんなどは、家に帰って飲んでしまうため、再び欠勤というパターンを繰り返している。これは「隠れて飲む」に該当する。さらに、職場で立場がどんどん悪くなって、孤立も深まり、負のスパイラルに陥る。
アルコール依存症が進行すると「連続飲酒」の状態になる。連続飲酒とは、短い間隔で飲酒を繰り返す状態を指す。酔いつぶれて寝るまで飲酒し、起き掛けに再び飲酒するような状態である。こうなると、心身ともに荒廃し、命に係わる状況になるのは時間の問題となる。
「依存症」とは、やめたくてもやめられない状態に陥ることをさす。つまり、自力でやめることが難しいということ。なので、医療の力が必要となる。
アルコール依存症の人の心理
アルコール依存症者の支援を難しくする特有の心理を以下に挙げる。
飲酒を人のせいにする
「家族の理解が得られないから」
「飲まなきゃやってられない」
など。飲酒理由を自分以外の何かに転嫁。
飲まなきゃやってられない、のパターンは職場でもよく聞く。毎日、子供の面倒を見て、お小遣い制で頑張って、これで酒でも飲まないでやってられるか、というのが決まり文句。自分の責任はどこ吹く風、といった感じで呆れてしまう。
といいつつもかつて自分が「こんな腐った世の中じゃ、酒でも飲まないとやってられない。」などと、主語をデカくして飲酒を正当化していた経験あり。
飲酒を生活の中心に考える
「酒だけが生きがいだ」
「これを止めたら、何を楽しみに生きていけばいいのか」
など。世の中、酒だけじゃないのにね。
飲酒を生活の中心に、といえばかつて夜の18時を飲酒開始タイムに設定して、生活のリズムをそれに合わせていた時期もあって、それも完全に飲酒が生活の中心に来ているパターンだったなと思い返せる。完全に酒に人生を乗っ取られていたわけだ...。
飲酒のデメリットを過小評価する
飲酒のトラブルに対しても
「まぁ無礼講だし」
「酔ってたから、仕方ない」
「あなたたちの若い頃だって」
などなど、謎理論で飲酒のデメリットを正当化。下手すりゃ死んでいた場合もあるのに、である。
最近では、飲酒のトラブルに対する世間の目は厳しいことをお忘れなく。飲酒運転の厳罰化をはじめ、自分の尻は自分でふけという風潮が育ちつつある。
自暴自棄になる
「自分なんていないほうがマシ」
「死んだほうが世の中のためになる」
など。これが始まると、取り付く島もない感じで、いよいよ事態は深刻化してゆく。
このように悲観的なことを述べる裏腹では、親切にしてほしい、手を差し伸べてほしいという言葉裏の感情が潜んでいることに注意したい。
コントロールできると考える
コントロールなんてできないくせに
「ちょっと飲むだけで止める」
「本気になれば酒なんて断てる」
などという。
コントロールできる人が、ブラックアウトして翌日、職場で白い目で見られるのは変じゃないか?それとも、酔って記憶をなくすほどの飲酒量にコントロールした、とか?まさかね...
自分より重症の人と比べる
「あの人よりマシ」
「健康診断では問題なし」
「事故や犯罪は犯してない」
などと考える。
「健康診断で異常がないんだよ!」と誇らしげに語り、毎晩浴びるように酒を飲む友人がいる。ほかにも嫌なことを忘れたいだとか酒だけが人生だとか、いろいろと複合してて完全にアルコール依存症者の心理に合致しているのに驚く。
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以上の心理状態に陥り、悪循環にはまった人には、専門家による治療しか救いの手立てはない。家族もさぞかし心配だろうし、本人にいくら言っても聞いてくれないどころか、飲酒を正当化して開き直ってしまう。
専門家のところまで連れて行くのも一苦労だろうし、そこで素直に治療を受けさせるのもハードルが低いとは言えない。けど、あきらめたらその人は近い将来、犯罪や事故に巻き込まれたり、健康を致命的に害して取り返しのつかないことになってしまう。
なんとか、治療を開始させたいものだが、難しい問題である。
「酒乱」の話
アルコール依存症と、酔ったときに問題を起こすということとは異なります。それは「酒乱」であって、依存症とは違います。酔ったときにいくら問題を起こしたとしても、たまにしか飲酒しない人はアルコール依存症ではありません。逆に酔ったときに周りに迷惑をかけなくても、飲酒がコントロールできなければアルコール依存症といえます。むしろほとんどのアルコール依存症の人は、静かに酒を飲んでいるものです。
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-05-001.html
「酒乱」=「アルコール依存症」ではない。
酒乱であっても、頻繁に飲酒しない人はアルコール依存症の診断はつかない。
酒乱は「異常酩酊」とも呼ばれ、飲酒に伴い気分が刺激を受けやすく興奮状態が続く「複雑酩酊」と、飲酒量によらず激しい興奮、幻覚、意識障害などを引き起こす「病的酩酊」に分かれる。病的酩酊者は数が少ない。
頻繁に飲酒しない、とはいえ飲酒量が多いほど酒乱リスクは高くなるし、酒癖により頻繁に他人に迷惑をかけている人は、断酒が強く勧められる。
単純酩酊・異常酩酊の詳細な解説はe-ヘルスネットの記事を参照のこと。なお、犯罪による責任能力は単純酩酊・複雑酩酊の場合に認められるとの記述あり。
アルコール依存症治療「断酒」と「減酒」
基本は断酒。まぁ、当たり前といえば当たり前。ニコチンもそう、「少しくらいなら」というものは存在しない。覚せい剤だってそうだろう。基本的には一切をスッパリと断つ。これができれば完璧。管理人も断酒に踏み切った。
かつて医学会では「節酒」という概念があって、節酒をさせたグループの2年間のフォローアップで良好な結果を示した、という事実がある。「では節酒でよいのか?」というと、そうはいかなくて、さらに長い追跡で結局節酒グループはほとんどが適切なアルコール使用に失敗してしまった、というのである。
ただ、問題は「断酒」というのがあまりにも苦しいイメージが強く、多くのアルコール依存症者が治療に踏み切れない要因になっている、ということ。
そりゃそうだろう、いままで酒を楽しく飲んでいたつもりの人生が、突然に飲酒量0になるのだから、ある意味「アイデンティティの喪失」とも言えるのではなかろうか。
簡単にいえば「寂しい」のである。お酒を1口も、これから一生、飲めないの??なんて、悲観的にもなるだろう。この世の終わりを想像するかもしれない。ちょっと、大げさだが、こういう人は必ずいるはず。
で!そんな中で選択肢のひとつとして出てきているのが「減酒」だ。
「ハームリダクション」という概念で、「どうせ止められないのなら、せめて量だけでも減らそう」という考え方。まずは「減酒」で治療を受けやすくして、ゆくゆくは「断酒」に移行していく。
後述するが、今はいい薬も出ている。医療の力を借りてまずは「減酒」そして「断酒」にむけて少しづつ進んでいく。このように聞けば、アルコール依存症の治療も、恐怖感が薄れるのではないか。
アルコール依存症で受診する
僕の住んでいる自治体は北海道旭川市なので、僕がアルコール依存症で病院を受診する場合は「アルコール依存症 病院 旭川」でGoogle検索するだろう。
「相川記念病院」や「圭泉会病院」などが表示された。どちらも旭川市では精神科治療では有名である。次に、まず病院に電話して「アルコール依存症の治療を受けたいのですが」と伝え、受診予約や受診時に必要なものを聞く。
アルコール依存症者の家族が、相談のために電話するのもよいだろう。自分たちでは、どうにもならなくなった時、医療機関に助力を求めることは大事なことである。最終的には本人が受診をしなければ治療が始まらないので、本人に受診を促していくアプローチも必要になってくる。そういったことも含めての相談をしてみるとよいかもしれない。
2018年には『新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン』が作成された。日本全国の医師がアルコールの依存症、薬物の依存症治療の基準とするための指針を新たに定めたのである。指針はこちら。
今後は全国的にアルコール依存症の治療が一般的となり、プレアルコホリックなどの予備軍も気楽に受診できる社会的風潮がはぐくまれることを願ってやまない。
アルコール依存症の薬
アカンプロサート(商品名レグテクト)
- 飲酒欲求を抑える
- 日本では2013年5月に承認・発売
- 断酒を目的とした治療では第1選択薬
- 作用機序:脳内NMDA受容体を介する神経伝達系阻害→報酬系低下→飲酒欲求抑制
- 効果は断酒中の人が服用で断酒成功率UP
- 5日ほどの断酒期間をおいてから服用が効果的
- 1日3回、2錠ずつ服用
- 副作用:下痢・軟便(多くは一過性でしばらくすると軽快)
- 腎障害があると服用できない
- 抗酒薬との併用も可能と考えられている
さらなる詳細はお薬110のこちらの記事(アカンプロサート)を参照のこと。
ジスルフィラム(商品名ノックビン)、シアナミド(商品名シアナマイド)
- 服用して飲酒すると悪酔い様の状態となり、気分が悪くなる
- 飲酒後の不快反応を利用して心理的に飲酒を断念することを目的とした薬
- 作用機序:アルデヒド脱水素酵素の働きを阻害→飲酒→血中アセトアルデヒド濃度上昇→吐き気・おう吐・頭痛・動悸などの不快反応を引き起こす
- 患者にとって「飲酒しないための1つの支え」という位置づけ
- 通常、退院6~12か月間ほど使用
- 断酒目的ならジスルフィラムは通常1日0.1~0.3gを1日1回、シアナミドは1日50~200mg(1%溶液として5~20mL)を1日1回服用
- シアナミドのほうがジスルフィラムに比べ速効性だが、効果持続時間も短い
- 副作用:アレルギーによる皮疹、肝障害など
- 重症肝障害や心臓・呼吸器疾患合併の場合は悪化のおそれがあり使用不可
さらなる詳細はお薬110のこちらの記事(ジスルフィラム・シアナマイド)を参照のこと。
ナルメフェン(商品名セリンクロ)
- 日本では2019年3月に承認・販売開始
- 飲酒時に得られる快感が弱まると同時に、飲酒に伴う不快感も軽減
- 減酒にも有効と考えられる
- 頓服薬(飲酒の予定ない場合は飲む必要なし)
- 飲酒後に飲んでも効果なし
- 副作用:悪心、浮動性めまい、傾眠、おう吐、不眠症、倦怠感の報告あり
- 上記症状は薬を使っているうちにおさまってくることが多い
さらなる詳細はセリンクロ錠の添付文書(pdfファイル)を参照のこと。
薬物療法の効果を高めるために
- 薬の正しい知識を身につける
- 副作用に注意する
- 医師の指示を遵守する
- 心理社会的療法と組み合わせる
心理社会的療法とは、酒害教育、集団精神療法、個人精神療法、作業療法、家族教育などを指す。
薬は特効薬的なものではなく、万能ではない。上記のことをしっかりと遵守しつつ、アルコール依存症治療の頼もしい味方として有効に利用すべきである。
間違っても通販で購入し、自己判断で使用していいものではない。
あとがき
この記事は、断酒することで人生の視界にかかっていたモヤが晴れるような気分になれた管理人が、自分と同じくアルコールで悩んでいる人に向けて情報を発信したいと思い、したためたものである。
酒は、世間では当たり前のように受け入れられている。夜の繁華街は酒で成り立っているし、ゴールデンタイムのTVCMは芸能人が喉を鳴らす。
しかし、酒で過ちを犯したり、健康を害す人に対しては、とことん冷たい。「それはセルフコントロール不足。自己管理不足。自己責任だ」と突き放す。
でも、酒は依存性のある物質だ。なりたくて、なったわけじゃない。アルコール依存症の人に必要なのは、罵声ではなく、治療。これは間違いない。
それに、今は楽しく問題なく飲んでいる人もアルコール依存症の人のことを笑えない。明日は我が身と考えないといけない。アルコールは飲み続ければ、遅かれ早かれ依存が進行する物質である。これを知ってか知らずか、みんな「自分はアルコール依存症になんて、ならない」と根拠のない自信を持っている。
でも、違う。プレアルコホリック(アルコール依存症予備軍)は大勢いる。治療が必要な人のうち、たった1割にしか医療の手が届いていないというのは、憂慮すべき事実である。このままでは、日本は将来的にアルコール依存症者を大量に生み出し、犯罪で人生を棒に振る人はもとより、健康被害でQOLが下がり生きづらくなる人が多量に発生して、医療費はうなぎのぼりになるだろう。
アルコールの害を放置すれば、この国に健康な未来はない。
もし、僕のように「自分は酒をやめたほうがいいかも?」と考える人がいるのなら、断酒は早いほうがいいと思うよ。勇気をもって止めることをお勧めしたい。
完全断酒に抵抗がある人は、今は新薬が出ていて減酒も選択肢に入ってきている。酒を不味くするのではなく、飲酒時に快楽を減じる「ナメルフェン」という薬は、減酒には画期的な効果があると思う。
こうした医療の力を借りて、是非ともお酒と向き合っていただきたい。「自分は大丈夫だよ」という人は、記事内【適切な飲酒とは?】を参照して、自分の飲酒量を客観的に把握し、それをオーバーしているようなら、その動かぬ事実を真剣に考えよう。
以上。
新たな情報あれば記事更新します。
※読者諸氏へ。情報提供あればお願いします。
主な参考書籍・サイト
この記事を書く上で欠かせない、必携の一冊だった。「自分はアルコール依存症かもしれない」「家族にアルコール依存症者がいて、悩んでいる」という方、是非ともご一読を。
厚生労働省のWEB。飲酒の害についての情報が網羅されている。
ここをすべて一読できれば、ちょっとした酒害博士になれる。
*1:『今すぐ始めるアルコール依存症治療』96pより