東野圭吾の『手紙』みなさんはご覧になったことがありますか?
私がこの作品に出合ったのは数年前。ビデオレンタルにて何気なく借り、家で号泣したのは記憶に新しいです。
今更ですが、小説のほうも見る機会があったので、違いとそれぞれの魅力について記事にしてみました。
大筋は一緒
弟の大学進学費用を得るために資産家老女の家に押し入り、結果的に強盗殺人を犯す兄。その弟の直貴が世間の差別に遭いながら苦悩と葛藤を繰り返す物語です。
映画と小説の大きな違い
ディティールよりも、「これは凄い差だ!」と感じたものをピックアップしました。
剛志が老女を殺した経緯
映画:誤って盆栽バサミを刺してしまう
小説:ドライバーを喉に突き刺す
いや~これはびっくりしました。映画版ではどう見ても「殺すつもりはなかった」風に描かれているのに対し、小説では露骨な殺意が表現されています。
直貴の朝美に対する行動
映画:特になにも
小説:避妊具に穴を空けておき、強引に襲う
小説版直貴、どうしちゃったのでしょう。凄いリアル...
朝美と強引に結ばれようと画策しての凶行でした。これは映画では描けないでしょうね(笑)
この世には差別があると言い切る直貴
映画:省かれている
小説:
「差別や偏見のない世界。そんなものは想像の産物でしかない。人間というのは、そういうものとも付き合っていかなきゃならない生き物なんだ。」
小説ではズバり、犯罪者家族への差別に対する確信をついた発言をしています。個人的には、これは大好きです。
直貴の感情や言動
映画:情緒不安定型、怒り狂う場面も
小説:冷静、厭世的
これも大きな違いだと感じました。
それぞれの見どころ
映画
壮大で感情に訴える演出多し。泣けるのはこっち。
小説
犯罪者家族への差別というものを、キャストの主観に囚われず客観的に描いている。テーマの本質に迫っているのはコチラ。
どっちから見れば良い?
どちらでもOKです!!
どちらかと言えば...映画から見てはどうでしょう、小説が良い意味でショッキングになります(笑)
こっちが映画。在りし日の沢尻エリカも見どころ!
こっちが小説!現実味があって、社会の一面を知ることもできますヨ!
【ネタバレ】映画の泣き所
なんといっても、直貴の刑務所慰問でしょう!
ここは譲れない泣き所です。剛志は被害者家族に許してもらえないことを理解していて、般若心境のごとく詫び状をひたすら送り続けた。しかし、直貴まで自分の存在を否定したい葛藤に駆られていることを、長い間わかっていなかったのですね。そして、直貴の手紙でついにその事実を知る。「自分は許されない存在で、最愛の直貴にすら受け入れてもらえないんだ」と。ある種、悟ったと表現しても良いです。
しかし、剛志は真面目なのです。自分の犯した罪と真正面から、大きな十字架を背負って向き合う覚悟ができていた。僕なら、直貴に否定されたことが分かった時点で、自分の人生から逃げる道を選ぶかもしれません。しかし、剛志の覚悟は深いものだったのです。
そこに慰問ですよ、最愛の弟が自分の慰問に来る。あふれ出る感情、主は「申し訳ない」「ごめんなさい」でしょうね。嬉しいはずなんです、弟が自分のいる刑務所に来てくれた。最愛の弟が、最低のことをした自分なんかに会いに来てくれた。その最高の嬉しさを申し訳ない慙愧の念が覆い隠しつつも、それでも喜びと悲しみの入り混じった単純ではない感情で溢れて涙が止まらない。そんな剛志の姿を見て、涙せずにはいられない。
決してハッピーエンドとはいえない、けど、ここに家族愛と偏見、消えぬ遺族の悲しみと前を向いて生きるすべてが帰結し、見る人の心にいろいろな種を植えるのですね。
【おまけ】直貴の夢の違い
映画:お笑い事務所でタレントとして大物になる
小説:音楽グループのボーカルとして全国デビューを目指す
なお、どちらの事務所も「リカルド」ここは共通。
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