- オーストラリアのタバコ事情
- 日本とオーストラリアの比較
- 世界のタバコパッケージ
たばこ1箱3200円に=豪が増税、愛煙家は悲鳴 (時事通信) - Yahoo!ニュース※リンク切れ
オーストラリアでたばこ1箱3200円になり、愛煙家が悲鳴を上げたというニュースを見て思うこと。それは・・・
日本のたばこが安すぎるんじゃボケー!!
ってことです。
- ただでさえ世界屈指の高さなのに
- 賃金比較
- 物価比較
- タバコ税増税は喫煙率を低下させる
- 日本はタバコを売るために安くしている
- FCTCの取り組み
- 日本、何してるの...
- 世界の警告パッケージ(一例)
- 所感
ただでさえ世界屈指の高さなのに
【シドニー時事】オーストラリア政府は3日発表した新年度予算案に、2017年から4年間、毎年12.5%ずつ税率を上げる大幅なたばこ増税を盛り込んだ。 25本入りの1箱が25豪ドル(約2000円)と、今でも世界屈指の高さだが、20年には40豪ドル(約3200円)になる。愛煙家からは悲鳴が上がっている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160504-00000056-jij-asia※リンク切れ
そりゃ悲鳴を上げるのも無理はないですね。
ここでは日本とオーストラリアの平均賃金を比較しないと話が進まないので、まずはそこから。
賃金比較
オーストラリアの給料って高いって本当? | オーストラリアに移住してみたブログ
こちらを参照に。
オーストラリアの最低賃金は
- 正社員で時給16ドル37セント
- もしくは週で622ドル20セント(週38時間労働の場合)
※政府が定めた公式のもの、2013年12月の記事より
1豪ドル80円(H28/5/5時点)として、正社員の時給は1,309円(小数点以下切り捨て)。この時点で日本よりも高いことがわかります。
週で49,776円(同)、1か月4週として月199,104円。7割以下の月収で労働力を犬馬の如く使っている日本とは大違い。これから賃金も上昇していくのだから、単純に金額の差でいえばオーストラリアが高いといえます。
物価比較
こちらが参考。
※2014年、シドニーの物価をもとに1か月の生活費を試算したもの
こちらを信用するのであれば、月106,000円で生活できるということになる。日本でもこれくらいの金額があれば車を持たない限り同じくらいの支出になるのではなかろうか。(豪では税金の支払いがどうなっているのか気になるが)
ということは、1か月の生活費は同水準でありながら、賃金は日本の2倍であるということが伺えます。節制をしていれば、月に10万円の貯金も可能。日本からオーストラリアに出稼ぎにいく理由はここにあるでしょうか。
物価は思ったより高くないですね。地域により差はあるようですが、「コーラ1本が400円する」というのは少々誇張のある表現のようです。
タバコ税増税は喫煙率を低下させる
以上のことから、やや物価の高いオーストラリアといえども1箱3,200円のタバコというのがいかに高値かはおわかりいただけるでしょう。物価を1.5倍に換算したとしても、日本のタバコが600円になるとして、その5倍以上の値段がついてしまうということ。
日本はタバコが安すぎる!オーストラリア並みに高くすれば良い - ポジ熊の人生記
1箱と言っても、オーストラリアのそれは25本入りね。主旨が変わるほどではないけれども。
2016/05/05 11:31
※ブコメで忠言いただきました、オーストラリアのタバコは25本入りです。それにしても高い・・・
ブーブー文句を垂れつつ、国民が選出した国会議員が立法した増税について根底を覆す行動は起こせず、甘んじて受け入れるのでしょうね。
さて、この大増税が行われれば、喫煙者の数にどのような変化が生ずるかは、実は予測ができます。
1995年には1箱5豪ドルで、喫煙率は25%。その後の度重なる増税に加え、2012年には健康被害を警告する写真を箱に大きく表示させる規制を世界に先駆けて導入した効果もあり、現在では喫煙率は13%前後まで低下した。
※リンク先は削除済み
健康被害を警告する広告は、喫煙者の不安を煽り余計に喫煙を促すという研究結果もあります。ではなぜ喫煙率がここまで下がるのかというと、ほかでもない、値上げによる影響なのです。
タバコ税を上げてタバコ価格政策を実施することは、最も確実な需要抑制政策であり、青少年や低所得者層などのハイリスク集団に選択的に優位に働き、政策実行のためのコストがほとんどかからない。
『禁煙学』改定3版 249pより
早い話がタバコ税増税は喫煙率を低下させるということです。
日本はタバコを売るために安くしている
- 日本のタバコ価格は国際的にも最安値の部類
- 若年層や低所得者層の喫煙抑制への効果にはほど遠い
- 2010年の増税による喫煙量低下は一時的
- 増税により安いタバコへの購買意欲が高まった
- 喫煙抑止効果を上げるには値上げが必要
※『禁煙学』改定3版 249pより
タバコを売るために税金を安くして利益を得るという構造が浮き彫りに。厚生労働省が音頭をとって受動喫煙防止や禁煙の普及啓発を行う傍ら、タバコが政治の世界にも影響を及ぼして増税に踏み切れないのであろうことは容易に想像できます。タバコ村が繁栄し続ける限りは、日本のタバコ税制は変わりそうにないですね。
オーストラリア並みにタバコ税を上げれば、喫煙率を下げることができるのにねぇ。
写真付き警告表示をたばこに表示している国が年々増加し、2013年には63か国にもなる。それに比べて日本は・・・
※記事内にはグロテスクな警告パッケージ画像を引用表示していますのでご注意ください。
FCTCの取り組み
まずは世界中のたばこパッケージ警告表示への取り組みについて端的に記載します。
2008年、南アフリカ共和国のダーバンでFCTC*1第3回締約国会議(COP3)開催、「タバコ製品のパッケージと包装」を規制する第十一条ガイドラインが決定。
http://www.nosmoke55.jp/data/cop3_11_200811.pdf
「警告表示は主要面積50%以上を用い、30%以下にしてはならない」「批准して3年以内に実行に移す義務あり」
FCTC加盟国は十一条ガイドラインを重くみて、たばこのパッケージに関して試行錯誤を始める。
これ以前、2000年6月にいちはやく取り入れたのがカナダ政府。ブラジルが2002年、シンガポールが2004年、2005年にはタイ・ベネズエラ・ヨルダン、2006年にはオーストラリア・ウルグアイ・パナマ・ベルギー・チリと広がる。
警告表示面積の広さにおけるランキング
- オーストラリア 75%
- ウルグアイ 80%
- スリランカ 80%
- ブルネイ 75%
- カナダ 75%
- モーリシャス 65%
- メキシコ 65%
- エクアドル 60%
- ニュージーランド 60%
- クックアイランド 60%
※平均値、全て写真表示あり
ちなみに日本は警告表示面積が30%以下で写真なし
日本、何してるの...
- 2012年1月よりオーストラリアで警告表示プレーンパッケージが義務付け
- フリップモリスや日本たばこ産業が「表現の自由の侵害だ」と訴訟
- オーストラリア最高裁「健康重要視する」→却下
こんなことやってました、日本。
明らかに健康に悪いものを売る際に警告表示を義務付けることが「表現の自由の侵害」ととらえるのは、おかしいですね。他人の健康を害する自由は許されるのかと問いたい。
前述のとおり、日本で販売されているたばこには警告表示があるものの、写真付きではなくしかも面積が30%以下とつつましい。世界中がCOP3を鑑みて動いている中で、悪あがきをしているようですね。でも、それも時間の問題かも。
参考書籍:『喫煙学 改定3版』252p~254p
世界の警告パッケージ(一例)
きついものにはモザイクを入れました。
オーストラリア
アメリカ
ブラジル
イラン
オーストラリアよりブラジルやイランのほうがずっとエグかった。ホラー映画のパッケージより酷い。これくらいやらないと喫煙は減らないので良いのでは。とても子供に見せられるものでもないですね・・・
Health Warnings | Tobacco Labelling Regulations
画像引用はこちらのサイトから。
所感
世界中のたばこ警告パッケージを見たけど、完全にホラーを通り越してます。これはあまりにもキツすぎるんじゃないかとも感じますが、これくらいやらねば喫煙者が減らないのであれば、断行すべきでしょう。
何よりも世界がたばこの撲滅について確実に動き出しているわけだし、グローバルな視点からも日本は村を徐々に縮小して、脱たばこ化へ向けて前進するべきじゃないかと。
それにしても、パッケージに警告表示をすることが喫煙者の減少に貢献するとは思ってませんでした。『禁煙セラピー』でアレンカーが「恐怖の画像は喫煙を余計に駆り立てるので逆効果」って言ってたけれども、実際の効果はいかほどなのか。追跡調査による喫煙率の変化にも非常に興味があります。
電子たばこ+ニコチンリキッドはコスパ最強【解説】 - ポジ熊の人生記
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*1:たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約