渡辺和子著『置かれた場所で咲きなさい』感想です。
なんども感嘆し、涙しながら読み終えたあとに僕の心に残ったのは
いちどきりの人生を笑顔で生きることの決意
でした。
書籍内容
波乱万丈の人生を生き、現在も全力で生きる齢85を超えた渡辺さんのエッセイを凝縮したものです。
幸せの見つけかた、辛い日の乗り切りかた、清くあるために
主に精神論を中心に語られておりますが、どれも胸を打つものばかりです。
母親や父親、生徒などを引き合いに思い出話を語られる場面の描写もあります。過去、幾人もの迷い人が彼女の生き様を見て前向きに生きる決意を固めています。今回は僕もその一人なのかもしれませんね。
特に印象に残った部分
もしあなたが誰かに
期待したほほえみが得られなかったら
不愉快になる代わりにあなたの方から
ほほえみかけてごらんなさい
ほほえみを忘れた人ほど
それを必要とする人はいないのだから
〈第2章 明日に向かって生きる〉より
渡辺さんが30代になってから出会った『ほほえみ』という詩に書かれていた内容です。とても素晴らしいですよね。相手に笑顔を期待せず、むしろ逆に笑顔のない人に自分から笑顔を分け与えよう、というのです。
人間というのはとかく誰かに何かを期待し、それが得られぬ苦しみで右往左往しがちです。これでは誰かの人生を生きていることに等しく、自分らしい人生とは言えません。
そうではなくて、自分を素直に認め、それでいて周りに関わっていく。その過程で笑顔を与えて周りに幸せを連鎖させていこうではありませんか、と問うているのです。
社会において他人にコミットしていくというのは、僕にとってハードルの低い行為ではありません。自分に立ち入ってほしくない、というスタンスが基本的にありますので、他人に立ち入ることもまた、大いに憚られる行為なのであります。
しかしながら、他社にコミットして影響を当たえ、社会と関わっていく。時に誰かと幸せになる勇気を持ち、生涯を共にするパートナーを決めることもあるかもしれない。そうやって「社会の一員」として、選手として生きていく必要があるのです。
そこではどうしても斜に構えてしまう。おそらく自分が傷つきたくないがための防御壁を前面に張り出して、意図的に冷えた感覚を持とうとしているに違いありません。しかしこれが仇となり、他者との関わりにおける弊害になりかねない。簡単なことではありませんでした。
そんなもやもやした感覚の中で出会ったこの著書を見て、僕が希求した答えに上手く合致しているような感覚を得たのであります。「そうか、笑顔でいれば良いのだ」と。
無理に作る笑顔ではなく、笑顔でいることに迷いなど必要ないのだ、ということを認識した、というか。そのような心持になれたのです。言い換えれば「笑顔で生きる決意を新たにできた」という具合です。
笑顔が増えた
不思議ですが、当書籍の読了いらい、僕は明らかに笑顔が増えました。この笑いは無理に作っているものではなく、周りに与えているものであると考えるようになりました。
こうやって過ごしていると、一緒にいる人も自然と笑顔になり、連鎖していきます。時には締める場面も必要ですが、そうじゃないときは軽い冗談を交え、基本的に笑顔で過ごすのです。そうすれば人間関係も滑らかになってゆく。
「笑わなきゃ」という意識ではなく、「笑うことはすなわち前向きな社会へのコミットである」という考えにシフトしたのですね。これが僕にとって全力で社会を生きる気構えの根幹に据えられたとでも申しましょうか。笑顔で過ごすことに何の迷いもなくなったのですねぇ。
斜に構える必要も、クールである必要もありません。楽しいときには笑顔でいればよいのです、スマイルを封じる必要はありません(時と場合に応じる必要はありますけども)。自分らしくあって、そこに笑顔があれば、あとは全力で生きるだけです。
今はどうしようもない状況でも、それを悔やむよりは「これでどうやって勝負しよう」そう考えましょう。ないことを嘆くのではなく、あるものを見つめてください。今、ここでどうやって咲くかを考えるのです。
あなたはいつでも笑顔で咲くことができるのですよ!
迷わずほほえんでください。笑い飛ばして生きましょうよ。一度きりの人生です、過去にとらわれ泣きはらして生きるのと、笑い飛ばして咲いて生きるのと。どちらが健やかで後悔しない生き方かはいうに及びませんよね。さ、今日も笑って咲きましょう!それを止める権利は、誰にもありませんから。
後記
渡辺和子さんは2.26事件で、目の前で父親を亡くしています。いわゆる粛清というやつです。当時は8歳でした。
幼い子供が目の前で父親を殺される・・・壮絶な体験です。PTSDになっても、おかしくはありません。しかし彼女は強く生きています。父親のことは「8年間、愛していただいた素晴らしい人」と形容し、謝辞を述べています。
どんなに辛い過去を背負っていても、人は強く生きることができるのだということを、自ら力強く発信している方と言えます。その生きざまに僕は何度も涙を流し、感嘆しました。
「老いも品格をもちながら、美しく笑顔で生きましょう」このようなことも、和子さんは述べられております。
この本は確実に強く、優しく、そして笑顔になれますよ。過去に縛られて身動きが取れない方は、是非ともご一読ください。ここには強く生きるためのヒントが凝縮されています。
今ここを生きぬは人生の嘘であると、アルフレッドアドラーは申しました。渡辺さんの論調はどこかアドラーの教えをかみ砕いて述べているように感じる部分も多々あります。
この書籍を読んで、皆様にどうか笑顔が増えますように。楽しく今を生きる力が芽生えますように。お祈りして筆を置きます。