某MMOで体験した、墓まで持っていくつもりだった話をカミングアウトする。多少のフェイクを交えさせていただく。この出来事は、かれこれ4年以上も前のこと...
MMOへの復帰
そのMMOは過去におおハマりした、認知度の高いゲームである。
かつて隆盛を誇った時代もあったが、最近では過疎化が進んでいる。
ふとしたキッカケからそのゲームに復帰した私は、知り合いもいないので一人寂しくシコシコとキャラクターの強化をしていた。
だが、この手のゲームはえてして、そういった新規参入プレイヤーに対して理解のあるベテランプレイヤーがいる。
多分に漏れず、私を拾い上げる方もいた。そんなわけであれよあれよというまに仲良くなり、ギルド(そのMMOのコミュニティ)に加入することになった。
ゲームで夫婦
そのギルドのマスターは女キャラで、今回勧誘してくれたのは男キャラであった。
いうまでもなく、それはアバターであり、現実世界の性別などはわかりっこないのだが、ロールプレイという意味では男らしく振る舞ったり女性らしく可愛らしい言葉づかいや仕草をするものもいた。
出会った二人もそういった性別的ロールプレイなのか素なのかは定かではないが、それを前面に出しており、さらにその二人はなんと夫婦だったのである。
ゲームで夫婦である。
現実世界で夫婦でゲームをしているわけではなく、その世界で。
特に驚かなかった。十年ほど前からそういう話はチラホラと耳にしていたし、珍しいことじゃないだろう、なんせ仮想世界なんだから。
彼らが夫婦設定であることになんの違和感もなく、ゲームをプレイしていた。
ある女キャラとの出会い
とても楽しい日々を過ごす中、とある「女キャラ」がマスター夫妻の旧知の仲ということで紹介された。
そのキャラは全身を女性らしくコーディネートされており、言葉遣いも女性らしく、「ああ、この人もロールプレイなのかな」と、その時は何げなく思っていた。
※以後、この女を「ミザリー」とする。映画ミザリーからネーミングしたかは想像にお任せする...
スキル上げ、狩り、釣り、ボス戦など、隆盛期を過ぎたとはいえ、魅力的なシステムが多数あり、楽しくプレイすることができたし、何より仲間ができたのが心強い。
マスター夫妻、そしてミザリーとの楽しいMMO生活は何事もなく過ぎていくかのように思われた。
だが、ミザリーの様子が徐々に変わっていったのだ。
ミザリーの好意
プライベートな買い物や狩りに行くにも、やたらと一緒に来たがる。
何気ない会話をしていても、異性の話をすると嫉妬のような感情を露骨に見せるなど。
これは明らかに好意をアピールしているのだろうなということはわかった。
しかし、私の中でMMOで恋愛をするという概念は全くと言っていいほどなかった(その時点では)。
しかし、事態はあまりよろしくない方へ進む...ミザリーが告白してきたのだ。
バーチャル恋愛スタート
「付き合ってください☆」付き合ってくださいったって(;´Д`)ゲームですよこれ...とはいうものの、人間関係が既に構築され、無下に断れないという空気もあり、私は渋々OKしてしまったのだ。
甘いレモンの心理とでもいおうか、人間とは都合よく考えるもので、「ロールプレイなんだから、まぁ、疑似的に恋愛するのもありかな」なんて考え始めていたのだ。
マスターが夫婦というロールプレイでゲームをしているのを見ていたので、それも納得する要因だったのかもしれない。
そんなわけで、私とミザリーはその世界でも公認の「カップル」となった。
そんなある日、事件は起きた。
チャットH
ある夜のことだった。狩りから帰った私たちは、ギルド活動を解散させて自宅へ戻ったのだったが、ミザリーが個室に私を呼んでこう言った。
ミザリー「さ、Hしよっか☆」
は!?
ちょっとまって。
Hて???
ゲームですよ、どうやってするのですか?
あまりにもヴァーチャルすぎやしませんか!?
なんて半ばパニック状態に陥る。
彼女は何を言っているの?といった風に、こういった。
ミザリー「チャットでHするに決まってるじゃん」
なんじゃこの世界はーーーーーーーーー!?
ここで彼女にはっきり「できません」とお断りすべきだったのだ。
だが、流されやすい駄目な私は...
チャットHをした。
チャットHの具体的手順
読者の皆さんは、おそらくチャットHでどんなやりとりをしたのかを知りたくてこの記事を見ていただいてるとは思うのだが、なにぶん、すべてのやりとりを克明に描いてしまうと、4流官能小説のようになってしまう。
なので、表現としては多少抽象的になってしまうことを勘弁願いたい。
手順を次に示す。
- 接吻
- 脱衣
- Touch
- 合体
- Go To Heaven
- 後ろの戯
これらを愛の囁きを交えてリアルにタイピングするのだ。
2の「脱衣」にあっては、マジで装備を脱いで床に捨てる。
チャHの内容については、ここら辺でどうか勘弁してほしい。もう限界だ。
だが、こんなことは長く続かない。
ミザリーとの距離は、次第に広がっていった。
破局と切なさと心強さと
チャHは私の精神を確実に蝕み、アニメ「サイコパス」でいえば色相が濁って、その指数が300をゆうに越えている状態、つまり心の限界を迎えていたのだ。
だから、夜寝る前にわざと自宅に素早く飛んでログアウトしたりして、間接的に彼女を避けたりしていた。
卑怯だが、私は怖かったのだ。
その結果、徐々に不仲になっていったのである。
だが、ある時には自宅前にワープで飛んだら、入り口にミザリーが立って待ち伏せていたこともあった。
あの時の恐怖は、ネット人生でも指折りである。
交際期間は数週間であった。
僕らは別れた。
結語
別れ際に、新たな事実を知る。
彼女が関係を持っていたのは、自分だけではないらしい。過去に数名、男性キャラと交際して同じような行為をしていたようだ。
つまり、ミザリーは数々の男たちを渡り歩きながらMMOの世界をさまよう、いわば電脳恋愛依存乙女だったのである。
そう考えれば、ミザリーは切なく、そして儚い存在だったのかなとも思う。
僕は、そのMMOを引退した。
彼女が今頃どこでどうしているのかはわからない。
チャットH。
これもロールプレイの一環としてはアリなのかなと思う。
ただ、それがプラスの作用を生むのは双方にその行為に対して前向きな気持ちがあることが前提であり、私のように意に反してそのような行為を行うことは真に不遜であった。
そして、今回の件も相手方への多大なる侮辱であったと、今さらながらに反省している。
もう誘われてもきっぱりと断るつもりだ。
自分が傷つくことを恐れていては、結果的に相手を傷つけることになるのだから...
ごめんよ、ミザリー。
追記
追記も何も未だに鮮明に思い起こされる、僕のネット史の中でもTOP3に入るくらいの衝撃の事件だったわけですけど、まぁそういう行為は普通、テキストではやらないよね?
というバイアスがもたらした僕の嫌悪感が全てなんだろうなって思います。
こういうのは、きっちりと断るべきでした。
自分にその気がないのに相手のその気に流されて乗っかった時点で僕の罪は確定です。
駄目ですね、中途半端に流されては。
これはこういう電子の世界だけじゃないですよ、リアルの世界でもきっと流されてはいけない場面は多々あると考えます。
それにしても、どうなんでしょう。
最近ではアダルトな分野もバーチャル化されて発展目覚ましいですけど、考えようによっては今回の件は相手がNPCじゃなくて現実世界にいるリアルな女子だとすれば、それはヴァーチャルを可能な限りリアルに近づけた体験を実現できていたといえるのではないか?
しかし、その行為に及んでいる僕は現実世界で世界のどこかもモニターの前で言葉を打ち込んでいる女性をリアルに想像し「なんじゃこりゃ」てきな不協和音が心の中で奏でられたから忌避感を催したわけで、やっぱりアダルトは完璧な機械仕掛けのヴァーチャルにしてくれないと割り切れない部分が人間にはあるのかもしれません。