「恋に焦がれて鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす」
皆さんはこの言葉をご存知ですか?
言葉の意味・発祥・歴史
まずは「都々逸」について辞書を引いてみました。
流行俗語。雑言を用いず、主に男女相愛の情を口語をもって作り、ふつう七・七・七・五の4句からなる。
ー広辞苑第6版より
俳句は季語の入った五・七・五
季語の入ってないものは川柳
短歌は五・七・五・七・七
であることは知っていましたが、七・七・七・五の並びで綴る「都都逸」が昔から親しまれていることを、つい最近知りました。
元来は、三味線と共に歌われる俗曲で、音曲師が寄席や座敷などで演じる出し物であった。 主として男女の恋愛を題材として扱ったため情歌とも呼ばれる。 七・七・七・五の音数律に従うのが基本だが、五字冠りと呼ばれる五・七・七・七・五という形式もある。
Wikipediaでは別の形式が示されており、七・七・七・五以外の句の並びも都々逸となるということを示しています。男女相愛を題材として扱う、という部分は基本らしいですね。
惚れて通えば 千里も一里 逢えずに帰れば また千里(作者不詳)
この酒を 止めちゃ嫌だよ 酔わせておくれ まさか素面じゃ 言いにくい(作者不詳)
浮名立ちゃ それも困るが 世間の人に 知らせないのも 惜しい仲(作者不詳)
三千世界の 鴉を殺し ぬしと添い寝が してみたい(桂小五郎説、高杉晋作説、他もあり)
逢うて別れて 別れて逢うて(泣くも笑うもあとやさき)
末は野の風 秋の風 一期一会の 別れかな(井伊直弼 茶湯一会集)
岡惚れ三年 本惚れ三月 思い遂げたは 三分間(作者不詳)
作品例です。
男女の恋を歌にしたものは現代でも巷にあふれていますが、都々逸には独特の風情を感じますね。
- 発祥は名古屋
- 名古屋節の合いの手「どどいつどいつ」を取り入れたもの
- 江戸の庶民に親しまれた
※有力説とのこと
Wikipediaより
次に、僕が最もグッとくる都々逸を紹介します。
恋に焦がれて鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす
流れるような美しい七・七・七・五の句でまず目を引かれ、その意味を知ることでさらに心に染みてくる、何度聞いても美しい都都逸です。
鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がすとは、口に出してあれこれ言う者より、口に出して言わない者のほうが、心の中では深く思っていることのたとえ。
上辺だけの「好きだよ」「愛している」などと口軽く言うものよりも、言わないほうがずっと相手のことを深く好いているということ。
巧言令色とは良く言ったもので、浮ついた言葉がポンポンと立て板に水の如く出てくる軟派な人は、どこか信用できないというか「お前、本当にそれ思ってんの?」と言いたくなります。
傾聴と不言実行
こと恋愛だけではなく、普段の人間関係においてもそうですね。主に自分のことを中心に、常にペラペラとおしゃべりに興じる人には、どこか軽薄な印象を受けます。逆に、相手の話に傾聴し、やるべきことを黙々と遂行する人は信頼できるもの。
言葉にするまでもなく、行動、背中で自分を語っている人。こういう人がいざという時に発言すると、あまり話を聞かない人間も思わず注目してしまうものですよね。
僕はここを目指したいです。
これまでの人生では、常に自分語りを中心に人とコミュニケーションをとってきました。時には語りすぎて相手の嫌な顔を見て、「またやってしまった」と自省することもありました。
最近は人の話を聞くようになった・・・気がします。コミュニケーションにおいて、相手の嫌な顔を見る機会は随分と減ったように感じるのです。もちろん、自分を語りたい欲求は常にあるのですが、遮ってまでそれをやろうとは考えなくなりましたね。
自分が聞き上手...とまではいかなくても傾聴を少し意識した態度をとれるようになった理由を考えてみました。
1つ目は半年以上という長い休暇期間を経た事ですね。これによりこれからの他者とのコミュニケーションについてあるべき姿を自分なりに描き、練ることができたのかもしれません。半年も自分と向き合えば、嫌でも色々なものを注視して変化していくものなのかも。
2つ目はブログですね。ここは好きな意見を好きなだけ書くことができるし、見てくれる人が大勢います。これにより、職場で誰かに自分を語る必要がなくなったのかもしれません。
他人は自分のことを聞かれると嬉しいものです。僕はブログでそれを補うので、職場で話を聴いてもらう必要はあまりありません。そのぶん、他人の話したいことを聴く力にリソースを振ることができます。
以上、私事でしたが、まぁつまるところ色々と苦労したんですよ。それで、人生について考える時間が増えて。それと同時期に始めたブログがうまい具合に人生と化学反応を起こしたってことです。みなさんも、苦労すれば巧言令色な姿勢が強制されて、角が取れるかもしれません。
さておき。
黙々とやるべきことをやって、他者の話に耳を傾け必要なことを口に出して生きていく。これが理想ですね。かっこいい。
恋愛についても同じでしょう。好きだからといって軽薄な言葉を連ねるよりも、相手に伝わるような行動で示していきたいものですね。
鳴かぬ蛍への道は険しいです。