羆の人生記

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映画「終わった人」ネタバレ感想 あらすじや結末など

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映画『終わった人』公式サイト

小説からの映画化ですね。

舘ひろしと黒木瞳の熱演は見ごたえがあります。 

メインキャスト

田代壮介:舘ひろし

田代千草:黒木瞳

浜田久里:広末涼子

山崎道子:臼田あさ美

鈴木直人:今井翼

青山俊彦:田口トモロヲ

二宮勇:笹野高史

あらすじ

一流企業のエリート街道を歩んでいた田代壮介は、同期のライバルに負けたことで出世コースを外れ、子会社に出向させられてしまう。そのまま銀行に戻ることなく、ついに定年の日を迎えてしまった。

「やることがない・・・」

仕事一筋だった壮介は、翌日から時間を持て余してしまう。公園、図書館、スポーツジムなど時間を潰すために立ち寄った先は、至る所に老人ばかり・・・。美容師として忙しく働く妻・千草(黒木瞳)につい愚痴をこぼし、次第に距離を置かれてしまう。このままではマズイと職探しを始めるも、高学歴・高職歴が邪魔をして思うように仕事が見つからない。しまいには、千草や娘・道子(臼田あさ美)から「恋でもしたら?」とからかわれる始末。ある日、大学院で文学を学ぼうと思い立った壮介は、勉強の為に訪れたカルチャースクールの受付嬢・浜田久里(広末涼子)に想いを寄せるようになる。さらに、通い始めたスポーツジムで知り合った新興IT会社ゴールドツリー社長・鈴木直人(今井翼)から会社の顧問になって欲しいと頼まれ、壮介の人生が大きく変わろうとしていた。定年を過ぎて仕事に恋に、第二の人生を歩み出した壮介。順風満帆に思えたのも束の間、次々と壮介の身に災難が降りかかってしまう。そして、ずっと支えてくれていた千草からも愛想を尽かされ、「卒婚」を提案されるのだった。

 

以上

映画『終わった人』公式サイト

より

 

ネタバレ時系列

  1. 壮介が会社で退職の日を迎える
  2. 送り出されても冷めた壮介は「まるで生前葬だな」と揶揄
  3. 家に帰り家族と退職パーティ
  4. その夜、千草に「これからは夫婦の時間を作ろう、温泉旅行に行こう」と提案するも「無理よ忙しいもの、1日だけなら付き合うわ」と一蹴される
  5. 翌日は午後までダラダラ
  6. 千草を車で迎えに行く
  7. 桜満開の公園で昔の思い出を語り「散る桜、残る桜も散る桜」と良寛和尚の一句を述べるが、千草は良い気持ちはしていない様子
  8. 帰宅後に千草から「明日からは迎えに来なくていい」と一蹴
  9. 2日目は公園や図書館へ行くも高齢者ばかりで辟易
  10. スポーツジムへ行くも、ここも高齢者ばかりだが入会してジョギングなどをしてお茶を濁す(ここで鈴木を見かける)
  11. 3日目に同窓の二宮と偶然遭遇し、彼のボクシングレフェリー姿で輝いているのを目の当たりにする。その夜は二宮と酒をかわしてラグビー部時代の思い出を語り合う。
  12. 帰宅後に千草にうどんを作らせるが、「愚痴や辛気臭いことばかり言うあなたの言葉にはうんざりだし、夜にうどんを作らされるのも嫌。いい加減現実を見ろ」とキツく言われる。
  13. 古書店で浜田と出会う(この時は簡単なやり取りのみ)
  14. 大学院へ行くことを決め、千草も応援し、事前勉強をすることにする
  15. 事前勉強の場所で浜田と再会し、恋に落ちる
  16. 浜田と食事をして、良い雰囲気になった(と思いこむ)が、結局はお持ち帰りできず
  17. 鈴木からIT企業の顧問になるよう依頼され引き受ける
  18. 生き生きと働き出す姿を見て、千草も「スーツが息をしている」と嬉しそうにする
  19. 浜田を出張先のホテルに呼び出すが、一夜を過ごすことなく帰られる
  20. 鈴木が急死し、社長に就任する
  21. 会社の経営は軌道に乗っているかのような描写がある
  22. 海外との取引でトラブルが発生する
  23. 千草が自分のお店を持ちたいと壮介に持ちかけて承諾を得る
  24. 従弟の青山宅で、青山と浜田が恋人同士であることを知る
  25. 海外の取引先が倒産し壮介の会社も倒産、9千万円の借金を背負うことになる
  26. 千草から三下り半を突きつけられて家を追い出される
  27. 地元に帰って旧友と再会し、NPOの事務をやらないかと依頼される、また、誰しもが老いるが終わってなどいない、と励まされる
  28. 千草のもとに帰り、一時は家に戻って家事などをするが、それが無理をしていることと見抜かれて千草から「結婚を卒業しましょう」と言われる
  29. 再度地元へ帰ることに。帰り際に浜田からお礼を言われる(夢をあきらめる助言をしてくれたことについて)
  30. 地元でNPOの事務として働く。壮介の顔には笑みがある。
  31. 千草が突然壮介を訪れ「2か月に1回は髪を染めに来るから」と告げる
  32. 壮介と千草の仲睦まじい桜満開の道を歩くシーンで終幕

 

感想

一言

壮介は東大法学部卒で一流銀行出という超エリート設定のため、どこか浮世離れしている感じ。地元高卒で地元企業に勤める管理人には想像すら難しい生活を送ってきたと思われます。ただ、仕事に打ち込んできた人が退職して燃え尽き症候群になるパターンというのは、同じサラリーマンとして共感しやすい部分でしたね。

感想を一言で。

人生はいつまでも終わらない、過去を振り返っても前には進めない

ですね。ちょいとお説教じみたものになります。

 

燃え尽き症候群と、家にいる夫

仕事に打ち込んだ人ほど、退職後に抜け殻になってしまう度合いは高まると推察されます。例えば休日返上でひたすら仕事して帰宅しても寝るだけ、とか。そんなことを60過ぎまで続けてりゃ、そりゃ「明日から何をしようか」ってなりますよね。ロボットじゃないんですから、切り替えスイッチなど付いてないのが人間です。

 

そして妻。夫でも同じですが。今まで夫は家にほとんどいなくて、それで何十年も生活してきたものだから、突然退職して家に夫がいるとなると、妻のストレスも溜まっていく、というのがステレオパターンです。まぁ、なんとなーく、わかりますよね。自分だけの静寂な時間が、切り裂かれる。家に突如として異物が現れたようなもんですから、疲れるのはさもありなん。

 

「なにを、今まで俺は頑張って家族を養ってきたのにその言いぐさは酷いんじゃないか」と思われる旧サラリーマンのお父さん、気持ちは重々わかりますよ。けど、会社に行っている間に家を掃除したり育児したり家計を管理したり、「家」というものを維持するために妻がしてきたこともまた大変なわけです。お金を入れた者だけがふんぞり返れる道理などありません。

 

それぞれに、生きるペースというものがあるのです。夫には夫の、妻には妻の。そして、夫は会社というものにそのペースを委ね過ぎたものだから、退職を迎えてペースメーカーを失った。どうやって動いていいかわからないのです。反面、妻は家での生活は変わらないわけですから、夫が退職しようと激変はありません。あるとすれば、家のことがほとんどわからない、何かと注文を付けてくる初老の男が家に一人増える事くらいでしょうか。

 

映画でも描いていますが、結局はそれぞれの道を歩む形となった。これはこれで良いと思うんです。無理に、夫婦一緒に何かをしようとしなくても良い。子供は子供でもうひとり立ちしているタイミングでしょうから、もし夫婦じゃなくなったとしても子供への影響が致命的に発生するわけじゃないでしょう。劇中でも「離婚しても、お父さんはお父さんだし、お母さんはお母さんだよ」って子供に言わしめています。

 

夫婦で仲良く老後を過ごしたいのであれば、貯金が必要です。お金のことじゃないですよ、同じ人間として対等に接し続けた信頼の貯金。これがなければ、「今日から仲よくしよう」なんて絶対に無理でしょう。亭主関白であれこれ難癖つけてきた場合は、もう手遅れ。熟年離婚待ったなしです。妻は寡黙に亭主の後をついてきて、今際まで片時も離れず下の世話を含めてやってくれるとか、妻はアンドロイドじゃねえんだぞクソジジイ、ってなもんです。夢は寝てから見やがれ。

 

人間ですから、それまでどのように扱われてきたのかは、しっかりと蓄積されています。大事にされてきたのか、それとも適当に扱われてきたのか。定年を迎え熟年夫婦になった際に、その真価が問われるといっても良いでしょうな。

 

劇中の壮介は、最後に千草といい関係を作って終わっています。これは、壮介が今まで家族を養って無事に退職したことの報いなのでしょう。家庭的な父親ではなかったのかもしれない、けど、千草とは目に見えない絆で結ばれていて、それは根底のところで切れない縁になっている。だから、こんなハッピーエンドなシーンが作れた。でもきっと現実はこうじゃない。泥沼の熟年離婚劇が今日も全国で繰り広げられている。全ては自分の生き様、それが跳ね返ってくるということなのでしょう。

 

退職後へ軟着陸しようぜ

会社で燃え尽きて廃人にならないための準備として、仕事以外で熱中できることを探しておくことです。僕ならブログ、ロードバイク、散歩。これは一人でいつでもできますから、妻がいようがいまいが関係ありません。一生続けていこうと思っています。

 

もしくは、再度仕事に就くことですね。劇中では学歴が邪魔をして零細企業に勤められない苦悩が描かれていますが、珍しいパターンでしょう。体が元気なら、今のご時世は退職後も何かしらの仕事に就けるはずです。体が動くうちに、仕事をし続ける。これも燃え尽きないための処方箋といえましょう。

 

人間というのは、認められたい生き物です。社会と何かしらの繋がりを持って、「必要とされたい」ものを誰しもが持っています。今までは会社でバリバリやってきたわけですから、その欲求も存分に満たされていたことでしょう。しかし、退職すると途端に人間関係が切れるとともに承認を得る元も切れてしまう。誰にも手放しでは認めてもらえない状況になる。これが、強い孤立感を生みます。

 

だから、孤独を感じないために必要なのは「誰かの役に立つ」「感謝される」ことを日常的にする必要があります。それはどんな形でも構いません。自分が「認められている、役に立っている」と心の底から思えればOKです。主観的で外からはわからないですが、本当にそう思えれば人間はハッピーになれるものです。引きこもりでもネガティブにならずに楽しく生きていける人がいるのは、そんな立場でも社会の一員であるという自己肯定感を持てるためです。こんな人は稀ですけどね。とにかく、自分でそう思えれば良いというとても曖昧なものなんです、社会所属感というのは。仕事はそれを得やすいだけ。だから、仕事をするのが手っ取り早い。お金ももらえるし一石二鳥。

 

前述の趣味に没頭する、というのはそもそも孤独感すらも感じないくらい熱中できる、という意味で解決します。社会の役に立っているとか立っていないとか、そんなことはどうでもよくて、ただ「これ」だけをやっていれば時間なんてどうでもいいや、ってものを持っている人は死ぬまでそれを続ければよろしい。でも、こんな没頭できる趣味を持てる人は稀だし、凄く幸運なことですよ。僕は仕事もせずに「これ」だけをやっていたい、というものに未だに出会っていませんから。そういうのがある人、羨ましいです。

 

んまぁ、ともかく、退職前にそのお仕事への情熱をプライヴェートなほかの何かに振り分けておく必要がありますな。事前に。ゴールテープを切ったあとに、社会的に心臓が止まってしまうと、そこから蘇生するのも困難を極めるっちゅうことです。他に打ち込む趣味があり「これで好きなだけできるぜ」ってのも良いし、「あのグループに呼ばれているんだよな、今後はそっちに注力しよう」ってのでもOK。「再就職先でも頑張るぞい」ってのでも。

 

退職後へ、軟着陸しましょう。ドガーーーーンと退職してしまうと、ほんと消し炭のようになって風に吹き飛ばされ、虚しい老後を送ることになりまっせ。

 

恋について

劇中で壮介と浜田が一時良い感時になりますが、歳の差は25歳以上。で、結局壮介は浜田にとって食事を奢ってくれるが一線は超えない都合のいいパトロンになっていた、と。

若い人と慕情を妄想するのは結構ですが、年甲斐ってのもあります。もちろん、歳の差恋愛はありますよ。けど、いつまでも自分が超年下の若い女の子とラブロマンスを繰り広げられるとは思わない方が良さそうですね。勘違いお爺ちゃんになってしまう。

もちろん、若い恋人と結ばれるケースも、なくはない。けど、現実はおそらく作中の通り。割合的に、「年上は奢ってくれるけど一生をともにするのは、ちょっと・・・」な人が多いんじゃないでしょうか。

いつまでも現役、ってわけにはいかない。特に年下好きのそこのあなた。鏡を見て、自分の年と立場を考慮して。そこから立ち居振る舞いを考えたいものです。

 

おわりに

人生はスペクトラムなもので、途中で「終わる」なんてないんです。終わるのは死んだときだ。それまではひたすら続く。レールに乗ったとか外れたとか良く言うけれど、人生のレールはどんな状況になってもひたすら続いてんだ。

 

そんで、過ぎ去った駅のことを思い出して悦に浸っても、現状はなにも変わらないんよ。思い出で笑えても、それは刹那的なものに過ぎない。ふと我に返った瞬間、待っているのは現実に広がる風景だけ。

 

じゃ、人間どうすりゃ笑えるのか。そりゃー、色々なものを捨てて現実を受け入れた時でしょうよ。今、心の底から笑えている人は、過去にどんな栄光があろうと、悲劇があろうと、それを清算できた人だ。「あの時は良かった」「生まれ変わりたい」と考えている人に、本物の笑顔なんか、作れっこないよ。

 

思い出は煌びやかで心地よいかもしれない、けれど、今を笑うなら今に生きないとね。会社を辞めたからって、あんたはまだまだ生きている。妻はうっとおしい顔をするかもしれないけれど、そんなものは放っておいて楽しく笑って生きればいい。妻になんか依存しちゃ駄目だよ。妻には妻の人生があるんだしさ。

 

そして、老いを楽しもう。昔はだれでも若かった、そして誰でも年老いていくものだ。だから、老いすらも笑い飛ばそう。笑って生きよう、この人生を。そのために、少しでも社会に所属している感覚を自分なりに獲得して、夢中になれるものに没頭して、気が付いたら三途の川を渡っているような人生を歩もうじゃ、ありませんか!

 

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