34の転落人生を一気に読むと、さすがに心が澱みますな(-_-;)
というわけで書籍の感想。
内容
正社員でも生活できない人たち、突然の失業で追い込まれた人たち、女性ワーキングプアの実態、底辺労働に希望が見いだせない若者たちなど、現代社会のいびつな構造を明らかにするインタビュー集。
働いても働いても食えない…。格差社会の悲痛な声。34人の魂の叫びから日本社会の闇が浮かび上がる!https://www.amazon.co.jp/gp/product/B01MQ3W0D7/ref=oh_aui_d_detailpage_o06_?ie=UTF8&psc=1
統計引用はほとんど出てこない、綴られるのはただひたすらに転落の人生を歩んだ34人の具体的事例のみ。
貧困本っていうのはデータを提示してそこから社会構造の問題や改革のあり方に一石を投じるものが多く、そこにいくばかりかの具体的事例を挟むものがほとんど(僕が読んできた中では)。
でも、この本は違うんだってばよ。なんというか、ひとつひとつのストーリーを読み終わるごとにみぞおちに重たいブローを打ち込まれるような感覚です。
人の不幸で飯を食おうと思って読んだわけじゃなくて「自分も他人事じゃないな、なんせ資格なし特技なしの30代半ばなんだから」という具合に社会を知ろうという意味で手に取ったんだけど、まさかこのようなマインドになるとは想像外。
34の事例のほかに座談会のようなものも設けられているけど、登場人物はなんせ全員ワープアだから「w」のひとつも生えない深刻な内容。雰囲気も伝わってきます。
転落の潮目
で
- 会社が倒産
- 会社がリストラ断行
が、ほとんどじゃないですかー!
※リンク先はWikiへ飛びます。
そういや職場の後輩の親が自営業で、リーマンショックの時は親父がいつ自殺してもおかしくないような生気を失った顔をしていたと言ってたのを思い出しました。雇われる方も切られちゃうけど、舵取りもそりゃあ大変でしょうね。
さて、書籍内のほとんど(というか全員)の人は、高校または大学を卒業後に地元企業へ就職もしくは上京して就職し、真面目に働いています。(この本を作るにあたり、惰性で反社会的な道に逸れて転落した人は恣意的に選ばれなかったのだと思います。)しかし、会社で一生懸命、身を粉にして働いても予期せぬ世界的恐慌や大災害の前には成すすべもなくワープア人生へ転落していったのです。
こういう人たちに罪はあるのか?僕はないと思います。ただ、罪はなくとも現実は変わらない。同じ会社で一生涯、安泰で定年まで勤めきって、老後はゆったり過ごすなんていうのは今や神話を取り越して妄想の部類に入るでしょう。こういう認識が、各自にあったのかどうか。
ある事例では「会社に勤めてるけどブラックな労働環境で、とても骨を埋める気にはなれない」と考え、宅建の資格を取得している人もいました。乗っている船が泥船だと客観的に気が付いた人はこのように何らかの手段を講じることができます。もちろん、本人の努力ありきなのですけれど。
しかし、ほとんどは青天の霹靂のようで、転職しても年収が6割、半分、酷いケースでは1/3にまで落ち込んだ人もいるわけです。万事が万事、塞翁が馬とも申しますけれども、今が安泰で会社一本で頑張っている人は、こういった事例を読んで想像力を働かせておくのが良いかもしれませんね。終身雇用・年功序列というのはもはや公務員にしか通用しない概念なのだと思います。
いやはや、それにしても切ないですね。自分なりに努力して、会社のために忠心を忘れず身を粉にしてきたというのに、ある日突然解雇されたとなると、その心境は察して余りあるものがあります。実に切ない。本人の身になって読んでいたら、闇の底へ引きずり込まれそうになる。
寝泊まり事情
漫画喫茶のナイトパックで寝泊まり
という事例多数。
実際にいらっしゃるのですね、こういった方々が。
そういや
ネットカフェ難民なんて言葉が、書籍とともに流行しましたね。この本、読みましたよ。筆者が身体を張ってネットカフェ難民の暮らしを体験するのですけど、心折れた時点で帰る家があって、そこでチャレンジ終了しているあたりはちょいと残念でした。ただ、せまっ苦しい薄壁1枚で隔てられた場所で寝泊まりをする苦しさというのがリアルに文章化されているので、気づきが多かったのは事実です。
保証人になってくれる人のいない、日雇い労働者にアパートを貸してくれるところなんて都合よく存在しないようです。だから、路上生活の一歩手前がネットカフェのナイトパックなんですって。ほんと、辛みしかない・・・。
違法すれすれ(というか違法じゃん)のシェアハウス
3畳一間の、薄っぺらい壁で区切られた部屋を、3~4万円で借りて住む生活。火災があったら多分死ぬような。貧困ビジネスのターゲットにされてますね。でも、こういうところを借りないと住居が持てない、だからどんなに生活環境が劣悪でも住まざるをえないという。
・・・ほかにも、アパートに住み続けてはいるものの居住費が生活を圧迫してヒーヒーいってる事例、かつて住んではいたけれども、家賃を滞納して家の鍵を取り換えられた事例などなど。安心できる場所がない、というのは人間の最低限度の生活を維持する上では非常に困難を極める状況なわけです。
病気は怖い
プログラマとしてバリバリ働いていた管理職のおじさん、会社の業績が悪化して転職を試みるも「あんた、糖尿病じゃん。雇えないわ」ということで同じ職種に就くことかなわず。(好条件の転職の内々定が出ていたにも関わらず!)それ以降も同じ理由で雇用されることはなく、結局はコンビニアルバイトや交通整理警備員などを転々として糊口をしのぐ生活へ転落。しかもお金がないもんだから病気の治療や健康の維持もままならない(!)。
いやいや
病気怖すぎだろ!
転職できるスキルあるのに、健康上の理由でそれができなくなるとか・・・。これじゃあ資格なし特技なしの人と何らかわらない。どうなんでしょう、管理人は資格なし特技なしだけど、今のところは病気を発症していないし元気です。どうですか?駄目ですかそうですか(;´・ω・)
まぁとにかく、どっか一社で仕事に打ち込んでいるあなたも、健康には留意したほうがいいですよ。適度に運動して(1日45分ジョギングとか)野菜中心の生活にして(1日350gが良いという怪談も)病気を可能な限り予防しましょう。もうこれはお勤め人だとか自営業だとかニートや無職やそんな隔たりはないんじゃないですかね。病気は避けねばならないっす!なったら損しかしない。いやそりゃ回復して「私は病気を克服しました」という成功体験はできるかもしれないし、それでサイヤ人みたいに怪我して復活したら強くなる的な現象はないことはないですが、生活習慣病は、あえて身体を侵されて越えるような困難じゃないですって。こればっかりは予防したほうが正解!
ひとつの会社にぶら下がるのがリスクになっている
ここは総評と書籍紹介です。
とにかく
ひとつの会社にぶら下がっていると危ない!
本を読んでいてつくづく感じた。恐ろしすぎる。
あなたの好きな会社に入って打ち込んでいる最中に水を差すのは無粋かもしれませんが、そこがいつまでも安泰と言えますか?公務員ならいざ知らず、民間の会社ならばいつ何時、世界情勢が不安定になったり大災害が起きて業績が悪化するとも限らないじゃないですか。そんな時にぶら下がってダラリとしている場合じゃないですよ。
いや、仕事を一生懸命やることを否定するわけじゃないんです。それ、すっごく大事ですし現に僕もその状態です。ただ、そこに身体も心も全部預けちゃ駄目ってことです。今の時代は、我々の未来まで保証してくれる会社(世間)などどこにもない。荒波の時代です。誰しもが一歩踏み違えることで砂漠を彷徨しかねない状況なんです。その中で具体的に我々には何ができるのかというと例えばブログで日常的に情報を発信して文章力を付けてネットで少なからずの収入を得ておくだとか、今の会社以外の強みになる資格の取得をしておくだとか、色々あると思うんです。こういうサブウェイを見つけておく。本線だけだったら、そこががけ崩れした時に転落するしか道がなくなるでしょ?これが怖いんです。精神的にも、余裕がなくなる。逃げ道はちゃんと準備しておかなくては駄目。そういうことです。だから僕も今こうやって一生懸命キーボードをぶっ叩いているんだと思います。
今日も粘り強くブログ作業していく。収益の新しい目標を自分の中で決めた!
— 羆 (@poji_higuma) 2017年9月22日
それと・・・ちょっと申しにくいのですが、この本に出てくる人は総じて家族や友人知人のバックアップがない。家族や地元の縁がないんです。こういう人がほとんど。これは貧困の条件に合致します。貧困ルポライターの鈴木大介氏は、書籍「最貧困女子」の中で貧困に陥る3つの条件として制度・家族・地縁の欠落を挙げました。
制度は公的扶助のシステムを理解してそれを利用する知識やバイタリティ、家族は両親またはどちらかの援助、地縁は友人知人の助けですね。書籍のワープアの方々は制度はおおむね利用しているようですが家族・地縁が皆無です。家族は何らかの事情があり、頼れないのでしょう。地縁は地元に根付いた生活を送っていない限り決定的な援助にこぎつけることは難しいと思われます。
もともと、こういった縁をきちんと身の回りに備えている人は、貧困から遠い場所で生活を送れるのだと思います。しかし、こればっかりは自分の努力ではいかんともしがたい。家族・地縁なんてまさにそうですね。ですから。もしこの3つ(制度はしっかり抑えてほしい)に恵まれない状況であれば、そういう人ほどすぐ隣にワープア転落への落とし穴があると考えてしっかりとサブウェイ(逃げ道)を用意しておくべきでしょうね。
ってか、公的扶助を上手に利用できない時点で、副業その他逃げ道の構築というのは難しい人なのかもしれませんが・・・
というわけで書籍。
統計情報で示されても、いまいちパっとこないんですよ、貧困というのは。でも、この本では34の重たーい事例をこれでもかとばかりに突きつけてくれるので、明日は我が身と思ってじっくりと読むことをお勧めします。お値段もお手頃。
また、サラリーマンにしがみついてリスキーな生活を送るのではなくて、仕事をしつつ「生産型」の趣味をみつけることで活路を切り開くという意味では、こちらの記事で紹介している書籍もおすすめなので合わせてご覧ください。