起業家志望の石田さんと話してみた時のメモ|けんすう|note
ブログ界の痛快ビッグダディ!? 八木仁平氏とその御家族がブログで活躍 - Hagex-day info
大学在籍4か月で起業家を目指して中退した石田さんのその後の悲惨さを報じる記事が話題を呼んでいます。
さてさて、この石田さんは考えなしでレールを外れた愚者なのでしょうか?
僕はそうは思えない、むしろこの年頃特有の兆候だと思うのですね。
知人の息子の話
知人の息子をAとします。
最近、Aは3年間在籍した大学を中退したがっているそうです。おやおやこれはどうしたことだろう、あと1年頑張れば大卒カードを手にできるタイミングじゃないか、一体全体どうしたというのだい?
よくよく聞けば、どうやら彼はyoutuberになりたいそうなのですね。当然の如く、母親は頭を悩ませるわけです。
母「あんたのやりたいことは否定しないけど、せめて大学を出てから目指してくれない?学費がもったいないんだわ」
A「母さんは俺のことを何もわかっちゃいない。今、やらなきゃダメなんだ」
母「いやいや、今ったって、あと1年頑張れば卒業でしょう。そのyoutuberとやらは大学のラスト1年を棒に振ってまでなるものなのかい?どうも理屈がわからんよ」
A「そうだろうね、母さんは昔からそうだ、僕のことなんか何もわかっちゃいない。夢を追いかけるには今しかないんだ、どうせ言ってもわからない」
母「ああ、わからんよ。普段から昼過ぎまで寝てるし、遅刻は平気でするし、真摯に今と向き合っている姿勢が見えない。どうせあんたのその夢とやらは、現実から逃げるための口実なんじゃないの?」
A「やっぱり言っても無駄だね。じゃあ、親子の縁を切るまでだ。僕は出ていく」
母「あのね、あんたが出て行っても行先なんてないでしょ。しかも行く先々で危ないところから借金したり誰かを殺めるようなアウトローな暮らしをしていたら、親である私たちや親類縁者に多大な迷惑をかけるのよ。世間とはそういうものなのよ」
A「いや、僕は引かない。youtuberになるために、今すぐ大学を辞めるんだ」
終始こんな感じでした。
これ、実際に僕の目の前で繰り広げられたやり取りです。知人のたっての願いで「錯乱した息子を説得するのに力を貸してくれ」というのもだから、近所のガストで話を聴いたというわけですよ。
この問答を見て、皆さんはどう感じますか?
僕は、Aが年相応の拗らせ感を十分に出していて正常だと感じます。そりゃ、母にとっては大学の費用を棒に振る行為なわけですから、ご免こうむりたい気持ちはわかります。息子のことを考えれば、大学の3年間を棒に振らせて得体のしれない夢を追わせようなど、まともな親は考えないはずです。
ですが、20歳そこそこのあんちゃんというのは、これくらいのものなのです。「俺には夢がある!」という大業な理想の陰には、現実と戦えない惰性が見え隠れしている。このAはそう見えました、何事にもやる気を見出せずに自堕落になっている部分は否定できませんからね。
つまるところ、石田さんにしてもAにしても、具体的な展望はないのではないかと思うのです。当の本人は「そんなことない!」と憤るのかもしれませんが、我ら社会でもまれた人間にしてみればそれは甘い見込み以外の何物でもないわけです。「誰かが助けてくれるに違いない」そう考えているのではないかということを察するのは容易でしょう。
歳は18歳や20歳そこそこ。世間のなんたるかを知っているわけでもない。それなのに「この社会で普通に生きていくよりも、俺は何者かになるんだ!」というおぼろげな理想にすがる。これは若者特有のモラトリアム拗らせ症候群なのではないかな、と。
ここで実際に大学を辞めるかどうかというのは、ひとえに周囲のサポーターやキーパーソン次第なんじゃないかなぁ。例えばAにしてみれば母以外で親しい友人などに「お前、ちょっと考えなおせよ」と言われれば自分の甘い見込みの勢いを踏みとどまる余地が生まれるかもしれない。そういう人間関係に恵まれなければ、本当に勢いで大学を辞めて路頭に迷うかもしれません。(youtuberとして成功する可能性も0ではありませんが)
親だって、子供に冒険させてあげたい気持ちは少なからずありますよ。僕だって自分の子供が選択した道は、全力で応援してあげたい。ですが、それが私生活において明らかに不真面目であったり目前の課題から逃避したいがための「言い訳の夢」に映るのであれば、それを手放しで応援することなどできないのです。
石田さんが私生活で自堕落で不真面目だったかはわかりません。ですが、何事においても全力で取り組むだとか、根性を見せるような態度があったかどうか、というのも不確かです。「若いうちなんだから、やりたいことをやってみたら?」っていうコメントを良く目にしますが、これってやるべきことをやらない人間にもかけられる万能の言葉なのでしょうか。僕にはちょっと疑問ですよ。
おわりに
石田さんは若いんですよ。世間の何たるかを知らない。察するに「誰かが助けてくれる」っていう甘い気持ちがどこかにあるのではないでしょうか。誰も彼の大学中退を命を懸けて止めてくれる人はいなかった。これは正直、縁に恵まれなかったのかなと思います。
もし、そういう友人知人がいたとして、その姿勢を見て「ここまで自分を止めてくれるのなら、この先はいばらの道で決して甘くはないんだな」という腹を少なからず決めて進むこともできたはずです。もしくは、中退を考え直して大学生活で起業について色々と勉強しながら雌伏の時を過ごす、という選択もあったかもしれません。
しかし、どうやら既に中退してしまったようですからね。もう後には退けません。「普通の」レールは脱線してしまったわけですから、これからは誰かに頼ろうという人生観をパラダイムシフトさせてサバイバルの如き貪欲なメンタルを持ちながら世の中を進む以外に、彼の生きる道は無いようにも思えます。
いや、なくはないですね。もう一度、親や関係者に頭を下げて自分の身の丈に合ったレールに復帰し、再起を図るという方法もあります。
まぁ・・・なんにせよ彼が路頭に迷ってどうにかならないことを切に願うばかりです。これは世間を知らない若人の勢い余った行動の結果であり、それ以上でもそれ以下でもないわけですから。
「Aは大学を辞めるべきじゃない、youtuberは卒業してもなれるんだよ」というアドバイスしたポジ熊がお送りしました。