書籍『もっと負ける技術』
一気に読み終わってしまったのですが、相変わらず読ませるし笑わされるしで終始口角が上がりっぱなしのコラム集がこちら。ニヒルで自虐的な面もある人にはうってつけの心温まる自虐ユーモアの頂点です。
これが前作のレビュー記事。自虐の天才カレー沢薫さんのキレは全く落ちません。
どんな本?
兼業漫画家であり、人妻であり、サブカルに親しんだオタクであり、何といっても自虐の天才が織りなすコラム。大手メディアの『マイナビニュース』で掲載したコラムを加筆修正して出版したものです。
扱うテーマは「兼業漫画家」「猫」「サブカル」が主なのですけど、基本的には豊かな語彙を駆使した「誰も傷つけない」天才的表現で畳み込むユーモラスな表現の数々。同じ文章を書く身としては、その表現方法の広さに学ばされることが多いのですが、それよりなにより終始笑わされます。休む暇を与えてくれないくらいに可笑しい。
今日はスタバで4時間かけて一気に読んできたのですが、あまりにも笑いをこらえきれないため屋外テラスへ移動したほど。
カレー沢さんに感じたシンパシーの数々
エゴサーチ
著者はエゴサーチをしているそうです。執筆の合間にも、「30秒に1回は「カレー沢」でエゴサしてます」と書いている。ここには多少の誇張はあるのでしょうが、僕と同じエゴサ中毒者なんだなと妙な親近感を覚えます。
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僕も10分に1回はTwitterやアクセス解析を確認してしまうほどのエゴサ中毒者であり、彼女の気持ちは痛いほど良くわかる。
今回の記事タイトルも「カレー沢」で始めていますので、おそらく筆者に拾ってもらえるものと淡い期待を抱いているのですが、彼女は気づいてくれるでしょうか。今日(当記事執筆時)は平日なので、会社が終わって旦那さんの食事をこしらえて漫画の執筆作業をしている頃と思われます。僕はストーカーでもなんでもなくて、今回の書籍で平日と休日の時間の使い方を公開されているのですよね、だから彼女の生活ペースを把握しているのです(笑)
『もっと負ける技術』からは神がかった自虐表現や知らない語彙を授かって感謝しているし、なによりも笑わせてもらいましたので、この記事では称賛させていただくことになります。しかし、もし彼女へネガティブな気持ちをぶつけたら「口内炎が7つくらいできますように」と祈られるようなので、称賛することにしました。
兼業
彼女は会社勤めと漫画家の2足の草鞋を履いている。僕はサラリーマンとブロガーです。同列には語れませんが、収入を得ているという意味ではどこか共通点を見出さずにはいられませんでした。
僕がサラリーマンを止められないのは「安定のため」です。臆病者と言われようとも、もし明日サイトが消し飛んでも、食うには困らない強固なバックボーンが欲しいから。切れるかもしれない綱でバンジージャンプをしない、及び腰な性格なのです。
カレー沢さんは「いかにリングに上がらないかが肝心」と述べています。これは卑怯なのでしょうか、僕はそうは思いません。彼女の気持ちは十二分に理解できます。「いかに負けないか」これって、現代を生きる上では間違った考え方じゃないと思うのですよ。
SNS疲れ回避
Twitterで濃厚に絡んだり、特定の人と仲良くなるようなことはありません。それは「人間関係に疲れてしまう」からです。ここもカレー沢さんに共感できる部分。
彼女曰く「私たち、プリキュアだよね」と言い出したらメンドクセェことになるのだとか(笑)兎にも角にも現実世界で疲弊するのは煩わしい人間関係に起因することが多いです。インターネットもそれと同じで、つかず離れずの距離感が肝心なのかもしれません。
気づき
多くの豊かな語彙は、ライティングを趣味とする者の端くれとして非常に大きな学びになっています。また、彼女が表現する自虐はまさに「自分をありのままに記す作業」であり、これほどまでに内面を文章化することが大事なのかと学ばされます。
特に有用な情報は発信していないと感じます。もちろん漫画家と担当者の折衝であるとか、デジタル機器を使用した作画作業についての時代の変遷だとか、専門的なことは発信しております。ですが、等身大なのですよね。彼女が描くのはいち兼業漫画家の思う自虐感であり、雲の上にいる人が書いているとはとても思えないほどに親近感を醸し出している。とっつきにくさがない、気難しさがない、ちょっとオタクでコミュ障な兼業漫画家が間違いなく書いているんだなと実感できる。ここに『もっと負ける技術』の面白さがあるのではないかと思うのです。
まぁ雑記ですよね、自分の私生活や内面をあけすけに語って、見る人に笑いを提供するのですから。これが雑記の最高峰ではないかと思えるほどです。ネタがなくても「自分はどう思っているか」をここまで面白ろ可笑しく語れれば、それだけでコンテンツになる、カレー沢さんはそれを実証しています。
もちろん、語彙もサブカル的な教養も必要ですよ。多くの人に訴求力を行使できるくらいの、惹き付ける文章を書く必要がありますし、純文学や最近のラノベ、漫画やアニメやゲームを始め様々なコンテンツに触れている必要はあります。自分の思ったことを面白おかしく加工して文章化する。これがいかに類まれな作業であるかは、この本を見ると痛感できるでしょう。
彼女は天才です。もちろん、努力が生み出したものもあろうかと存じますが、自虐で対等に渡り合えといわれても無理です、これは正直、生まれ持った天賦の才と言わざるを得ない。持ち上げすぎだと思う方は、是非ともいちど当書籍を読了してください。痛感せずにはいられないはずです。
おわりに
ブロガーとしての話になりますが。
この本を見ておいたほうが良いです。かしこまって難しいことを専門的に発信しなければ人気が出ないんじゃないか、なんて小難しく考えている人は今すぐこの本を読んでください。そうすれば、自分の言葉で好きなように書くことがいかに魅力的なコンテンツを生み出すかを知ることができます。同時に「私も楽しくブログを更新してみよう」そういう心境に至るに違いありません。
カレー沢さんには申し訳ないのですが、まだあなたの漫画を一度も読んだことがないのですよ(笑)ですが、前作『負ける技術』今作『もっと負ける技術』を読了して、すっかりファンになってしまいました。類まれなライティングスキルや読ませるコラムの数々に魅了されてしまったのです。いつか、あなたのサイン会に突撃したいと考えています。裸にピアスで行くかどうかは、別途考えますね。