実話に基づいた物語。
感想は記事内をご覧ください。
あらすじ
すべてを焼き尽くす未曽有の山火事に、
たった20人で立ち向かった男たちがいた—。
猛烈な勢いで山を焼き尽くす炎。近隣住民も森に住む動物たちも一斉に逃げ出す中、炎に突入しチェーンソーで次々と木を切り倒す男たちがいる。アリゾナ州プレスコット市の森林消防隊員たちだ。火の動きを読んだ指揮官のマーシュ(ジョシュ・ブローリン)は、迎え火を焚き、火をもって火災を抑え込もうとする。だが、現場の権限を持つ米国農務省の“ホットショット(精鋭部隊)”に、「“市”レベルの消防隊員が余計な口出しをするな」と言われてしまう。
麻薬にセックスに・・・と堕落した日々を過ごしていたマクドナウ(マイルズ・テラー)は、ある日、数か月前に別れた恋人が妊娠している事を知る。動揺し彼女に会いに行くが、「この子は私と家族で育てるから、あなたは関わらないで」と拒絶され、むしゃくしゃした勢いで駐車中の車から携帯を窃盗、その場で逮捕される。何とか仮釈放されるも、母親に家からも追い出され、何処にも居場所が無くなったマクドナウが向かったのは、新人募集の案内を出していたマーシュ率いる森林消防隊だった。
採用面接中、一目でマクドナウが薬物中毒だったことを見抜くマーシュ。他の隊員が「あいつは何でも中途半端なダメな奴だ」と猛反対する中、マーシュは窃盗罪で保護観察中の彼を採用する。「生まれたばかりの娘を幸せにしたい」、「人間として生まれ変わりたい」という決意を買ったのだ。新しいメンバーも増え、またいつも通りの地獄のような訓練を始める消防員たち。マクドナウのことを信じていなかった他の隊員たちとも、命を預け合う現場を通して次第に絆が深まっていく。そんな隊員たちを誇りに思い、自分たちも“ホットショット”になりたいという夢を捨てきれないマーシュは、妻のアマンダ(ジェニファー・コネリー)に勧められ、市の消防署長で親友でもあるデュエイン(ジェフ・ブリッジス)に、自分たちのチームを“ホットショット”に認定してほしいと相談する。地方自治体の消防隊が“ホットショット”に昇格した前例はなかったが、彼らの実力に惚れ込むデュエインに説得された市長は、審査を受けられるよう手配するのだった。
そんなある日、チリカウア山脈で発生した火災へ駆けつけ、まさに本番で認定審査を受けることになるマーシュたち。強風にあおられる火災を食い止めるために、マーシュは炎の“燃料”となる木々を焼くという判断を下すが、審査官から迎え火で火事がさらに勢いを増すと静止される。二人は激しい口論となり、マーシュは審査官に「あんたは黙ってろ!」と怒鳴ってしまう。
結果は、マーシュの勝利だった。マーシュを心から敬愛する副官ジェシー(ジェームズ・バッジ・デール)は、「審査がダメでも俺たちは森を救った」と誇らしげに胸を張り、隊員たちも深くうなずくのだった。
審査発表の日、「君たちのボスは生意気だが、君たちは最高の消防士だ」という審査官からのメッセージと共に“ホットショット”への昇格が告げられる。だが、隊員たちの歓喜も束の間、愛する家族を残して火災に立ち向かう彼らを、アメリカ史上最も恐ろしい、山を飲み込むような巨大山火事が待ち受けていた──。
感想
この映画は、史実を知っているか知らないかで、感想が変わってくると思います。僕は全く知らなかった。
知っている人は、特別な感慨で観覧に臨めるでしょう。
知らない人は、どのような物語かを興味が尽きず観進めることができて、最後には祈ることになります。
ネタバレ・・・とはいっても史実のことですからネタはとうの昔にバレているのですが、劇中の森林消防隊19人が殉職します。山火事に飲まれて。
そこに至るまでの各隊員の人間ドラマ、伴侶との気持ちの揺れ、仕事にかける熱い想いなどが巧みに描かれていてスクリーンに引き込まれる構成になっている。
感想を一言で
「とても切なくなった。大切な人には普段から気持ちを言葉にして伝えておこう」
突然、帰らぬ人となる19人。もちろん、その中には愛し合う家族がいる人もいます。家族が、大切な人が、大切な人の訃報を聞く絶望的なシーンも描写されていて、それを観るのは本当に辛かった。その気持ちは、推しはかるにははばかられる。
僕も、独身ですけど大切な子供もいますし、親も健在です。なかなか照れくさくて言葉にするのに抵抗を感じますが、できるかぎりで今のうちに感謝の気持ち、本心を伝えたいですね。
切ない成分はラストシーンで一気に来ますが、それまではアメリカの森林消防隊の体育会系でおバカなノリも随所に描かれていますし、仕事にかける情熱にも心を打たれるところです。ここらへんも見どころですね。
史実を知らない人は「祈ることになる」と先ほど申しましたが、僕も今日は祈ったんですよ。シネマで手を組んで祈った。19人をどうか生かしてください、神様、的な。ラストでは19人が生き残るために最終手段の防護策を講じるんです。それは、きっと生き残れる確実な手段なのだろうと信じていたのです。きっと、彼らは、この惨事を乗り越えて、愛する家族のもとに笑顔で帰ることができるのだろう。きっとそうに違いない。いやそうあってくれないと困る。
祈りは通じませんでした。19人は、山火事に飲まれて殉職です。むごい・・・なんという結末。シネマから帰る際のテンションが、少し変になってしまいました。半端ない切なさです。
エンドロールの前に流れる、殉職した各隊員の名前と実際の写真。その背景には愛し合った人や家族の写真も添えられていて、エモーショナルな演出がなされています。これが余計に感情を掻き立てるのですよね。
さて・・・実際の事件のニュースを引用します。
(CNN) 米西部アリゾナ州当局は1日までに、同州ヤーネルヒルで発生した山火事の消火作業に当たっていた消防士19人の死亡を確認したと発表した。
死亡した消防士の大部分は同州プレスコット市の消防職員。同市の消防当局は先に、18人の死亡を確認したと発表していた。
州の森林当局によると、消防士は延焼を防ぐための防火帯を設ける作業にあたっていた。同局のアート・モリソン氏は「通常防火帯を作る場合は、十分な避難路を確保する必要がある。今回は明らかに十分なスペースが確保できておらず、炎が消防士を襲った」と状況を説明した。
山火事は6月28日に発生。森林当局によると、延焼地域は約400ヘクタールを超え、住宅3棟を損壊。ヤーネルなどの住民に避難命令が出ていた。
当局は火災の原因を落雷と見ている。
2013年7月1日のこと。
9.11テロ以来最大の消防士殉職者を出した災害。
【大阪から世界を読む】山火事で死んだ19人の消防士…異常熱波の炎に焼き尽くされたそれぞれの「人生」(1/4ページ) - 産経WEST
各隊員の家族の想いについては、こちらの記事が参考になります。
なお、劇中では森林火災に対する戦術が、建物火災のそれとは一線を画す特殊なものになっていることにも注目です。土を掘って防火ラインを作る、先に木を燃やして延焼を防ぐ、などですね。樹齢2000年の国の宝を、戦術により見事食い止めるシーンもあり「ほほう」と興味をそそられました。なるほど、これはプロフェッショナルですね。この世界で厳しい訓練や実務経験を経ないと、とても身につけることができる技術ではなさそう。
日本の火災戦術でも「破壊」というものがあるそうです。これは延焼しそうな建物を破壊して燃えるものを先に壊してしまうという、街区火災など大規模な災害時に有効な手段だそうです。江戸時代の火消しも、建物を壊して延焼を阻止したと記録されています。現代は水を消火剤にして火を消し止めることが主になっています。
最後に・・・
オンリー・ザ・ブレイブ。ラストで大逆転、心温まるストーリーではありません。ですので、シネマへ足を運ぶ人は心してどうぞ。最後は痛烈な切なさがあなたを待っていることでしょう。ですが、彼らの勇敢な姿に敬意を表すとともに、自分の仕事に対する気持ちも大いに鼓舞されるに違いありません。