映画『貞子 vs 伽椰子』を観た感想や情報などを記載する。
※ネタバレの連続につき注意されたし
- ついに公開された『貞子vs伽椰子』
- 勝ったのはどっちよ?
- 貞子と伽椰子の攻撃手段は?
- トシオの物理攻撃力が上がっている!?
- 呪いの効力を整理しよう
- サイコな登場人物がイカす
- 凄腕霊媒師登場で途端に浮つく感
- 2つの呪いはどうやって進行するのか
- 死因など数字的なもの
- ストーリーと結末
- 怖かった?
- 貞子と伽椰子が「走っちゃった」
ついに公開された『貞子vs伽椰子』
公開日:平成28年6月18日
この記事は公開初日に観に行った映画のレビューである。
かなり前から話題になっていて、密かに気になっていた映画であり、普段は映画館で大金を支払って観るなどしない主義を例外的に覆してまで観に行ってきた。
ブロガーとしてはネタを大量に獲得できたし、エンターテイメントとしても決して見応えがない作品ではなかったので、満足している。
貞子は映画『リング』の主役であり、呪いのビデオを媒介とした強烈な怨嗟の思念を纏う存在。伽椰子は映画『呪怨』の主役で、呪いの家を拠点に子供のトシオを従え、確実に相手を死に至らしめる禍々しい風貌の女性である。
どちらの映画もかつてホラー界隈を大きく賑わせた作品であり、いちどは観たことがある人が多いのではなかろうか。今回のレビュー作品を視聴するにあたっては、『リング』及び『呪怨』を観ておけば、予備知識を得られるのでより一層楽しめるだろう。
勝ったのはどっちよ?
まどろっこしいので、結論から書く。
勝者はいない!
登場人物の殆どは死んでしまい、悲惨な様相を呈すので覚悟してほしい。強いて表現するのであれば、貞子も伽椰子もどちらも勝者だし、両方ともいなくなってしまうとも言える。
貞子vs伽椰子、というくらいだから両者がガチでバトルするシーンはある。だが、その時間は長くない。洋画のように熾烈な頂上バトルを延々と繰り返すような展開にはならないので、ここらへんを期待している人は、ちょいと気持ちを改めたほうが良いかもしれない。僕はそんなことは望んでいなかったため、今回、割とあっさり目だったバトルにも満足はしている。
貞子と伽椰子の攻撃手段は?
貞子:髪の毛巻き付け・呪いの眼
伽椰子:異次元引きずり込み・何か知らんが切れ味のいい何か
最強の攻撃力(呪力?)を有するのは、何といっても貞子の『呪いの眼』だ。これを見てしまうと、瞬く間に心臓が止まって呪い殺されることは『リング』シリーズをご覧になった方はご存知だろうが、なんと伽椰子もこの技で破裂させられてしまう。頂上決戦なのに、片方の頂上が見られただけで木っ端みじんとか、貞子が強すぎやしませんかねぇ。
『何か知らんが切れ味のいい何か』とは、あまりにもボカしすぎた表現だが、劇中に登場する少女のお母さんが、この手段により両足首より下をスパっと切断されて移動力を封じられているシーンがある。かまいたちなのか、それとも神通力なのか。とにもかくにも切れ味のいい何か、なのである。vs貞子戦でこの技を繰り出していれば、もう少しいい勝負ができたんじゃないかな。
ここまでの記述を見れば察して頂けるのだろうが、とにもかくにも貞子が強い。なにせ、貞子本体には基本的に傷ひとつつけられていない。伽椰子も貞子に引きずり込みを仕掛けるのだけれど、奥から出てきたのは貞子の髪の毛攻撃に囚われて必死に逃げる伽椰子の姿なのである。ここまで貞子を強くしているのは、スタッフ側の何らかの恣意があるのかと疑ってしまう。
トシオの物理攻撃力が上がっている!?
伽椰子の息子として、際立つ脇役ホラーキャラとして『呪怨』で活躍してきたトシオであるが、今回は積極的に人を殺していく。あるときは飛びかかって異次元へ連れて行き、あるときは飛びかかって首をミョーンと引き延ばして殺しにかかる。おやおや、トシオって不気味な存在ではあったが、ここまで物理攻撃をしかけてくるキャラクターだったか?そういった微妙な機微を表現するには、映画の寸の問題で難しかったのかもしれない。兎にも角にも、今回のトシオはやばい、危険すぎる!
なお、チートクラスの強さを誇る貞子により、TVの中から伸びた髪の毛により、あっさりと引きずり込まれて戦力を封じられてしまう。貞子と伽椰子はプロレスするけど、そこにトシオの入る余地は無かったようだ。
呪いの効力を整理しよう
貞子
呪いのビデオを再生すると、奥のほうにドアがある廃墟のようなシーンが移る。その後、「ガーン」とドアを叩くような音がして、ドアが開き、貞子がコマ送りでこちらに近づいてくる。ビデオはノイズ画面へ移行。これを全て見た直後に、電話(携帯・固定など何らかの手段で)がかかってきて、「キーン」という耳鳴りのような音が流れる。ここからちょうど2日後、呪われた人は貞子を見て死ぬ。傍目(第三者)には自殺のように見える。なお、「誰かに見せると助かる」というのは眉唾であり、それでは呪いが解けないことを作中で示唆している。
伽椰子
基本的に拠点である『呪いの家』に入ったものを呪い殺す。大体はその場で異次元に連れていかれるなどして殺される。その前にトシオにちょっかいを出されることもあり、彼に直で殺される場合もある。とにかく呪いの家に入ってしまうとその致死率が半端ではなく、『貞子vs伽椰子』では足を踏み入れた登場人物は例外なく(見込みを含め)全員が死んでいる。家からいちどは脱出できた少女が描かれているが、最終的に死亡(見込み)。今回は呪いの家以外で伽椰子が直で呪いを発動させるシーンはない。家に足を踏み入れた後に伽椰子の呪いを解く方法は、結局のところは無い。
サイコな登場人物がイカす
やばいのが2人いる。
一人は「呪いのビデオマニア」の森重教授
一人は有里の友人の夏美
森重教授
序盤に大学で都市伝説に関する講義を行った際に「僕は呪いのビデオに惹かれている。本物を持っている人は高値で引き取る、嘘じゃない」と真顔で説明する。
有里と夏美のうち、呪いのビデオを最後まで観てしまった夏美を救うべく森重教授のもとにビデオを持参するが、怖がるどころか「まじかよすげえ」とばかりに狂喜乱舞、さらに「僕はこれを観る、貞子が見られるならたとえ2日後に死んでも良い」と言い放つのだが、どうやらこれは本気だったようだ。
このあとに霊媒師のもとを訪れて貞子の除霊を依頼するのだが、依頼したのは夏美一人だけ、森重教授は「僕は結構です」と。実はこれ、本当に貞子が見たいがために、除霊を避けたものと思われる。この人、まじでイッてるなと思った...。んで結局、貞子に操られた人に頭突きで殺されるという。貞子、見せたれよw
夏美
有里と夏美でふとしたきっかけから、呪いのビデオを再生してしまい、それを「全て」見てしまった夏美は恐慌状態に。それから次第に精神が崩壊していき、友人の有里に全ての責任を負わせるような発言をしたり、なんと呪いのビデオをインターネット上にアップロードしてしまう。何てことをしやがるんだこの女は、と呆気にとられていると、次はなんと有里に「呪い殺されるくらいなら一緒に死のうよ」と心中を持ちかけたではないか。とんでもないメンヘラ...!
最終的にはドアノブで単身、首つり自殺を図るのだが、そうはさせまいとばかりに登場した貞子の呪いの眼で秒殺されてしまう。この時に、「貞子は呪い殺される前に自殺を図っても、予定より早く出てきて殺しに来る」という情報をもたらす。新たな知見である。
凄腕霊媒師登場で途端に浮つく感
経蔵という凄腕霊媒師が登場するのだが、霊感の強い盲目の少女を連れて高額な料金をせしめたり、怪しげな手の動きで能力を発動するなど、今までのホラーな雰囲気を吹っ飛ばしてしまう。だが、貞子や伽椰子の呪いを熟知しており、簡単な呪いは弾いてしまうあたりに、唯一対抗できるかもしれないという希望を抱いてしまう。こういう浮ついた人物や背景もまた、今回の魅力なのかもしれない。「貞子、いちどおめーに会いたかったんだ」的な啖呵を切るシーンでは、無条件に「強い」と思わせてしまうインパクトを持っている。
2つの呪いはどうやって進行するのか
ストーリーはまず、貞子の呪いで始まる。それからしばらくは呪いのビデオを軸に進むが、次に呪怨でおなじみの呪いの家の近くに引っ越してきた鈴花が、その魔力に惹きつけられる場面も登場し、それ以降はほぼ同時進行で物語は展開していく。片やビデオで死者が出て、片や呪いの家で小学生4人が行方不明になるなど。凄腕霊媒師の経蔵が登場してから「化け物には化け物をぶつけるんだよっ!」というセリフで両方の呪いが合わさった本流となり、作戦が決行されるのである。
理屈はこうだ。「貞子の呪いを受けた有里は呪いの家に入ることで伽椰子の呪いを受ける。伽椰子の呪いを受けた鈴花は、呪いのビデオを見ることで貞子の呪いを受ける。これを有里の死亡予定時刻とちょうど合わせれば、貞子vs伽椰子となり、呪いを消滅させることができるだろう」
死因など数字的なもの
主要人物の死因
有里:貞子と伽椰子に呪い殺される※
夏美:貞子に呪い殺される
森重:貞子の操る霊媒師に殺される
経蔵:貞子と伽椰子の呪いの衝撃派で殺される※
鈴花:貞子と伽椰子の集合体である最強の呪いで殺される※
※死亡見込み
有里は井戸の中で貞子と伽椰子の集合体に飲み込まれており、経蔵は衝撃波で半身が吹っ飛ばされていて、鈴花は最後に貞子と伽椰子の集合体に襲われている。このことから、これら3人はおそらく死んだものと思われる。
脇役の死因
独り暮らし(と思われる)おばあちゃん:貞子に呪い殺される
上記おばあちゃんを訪れた民生委員の女性:同上
雑貨屋店員:同上
霊媒師:同上
霊媒師助手A:同上
霊媒師助手B:同上
小学生A:伽椰子に呪い殺される
小学生B:同上
小学生C:同上
小学生D:同上
鈴花母:同上
鈴花父:同上
ーー
主要キャラと合わせると、貞子・伽椰子の各スコアは
貞子:8
伽椰子:6
となる。貞子にやや軍配が上がる。なお、貞子と伽椰子の集合体に殺された人はノーカンとした。殺され方はどちらかといえば伽椰子のほうがエグい。貞子は呪いの特性もあってか、どこかじっとりとした感じ。ただし、霊媒師に乗り移るシーンでは媒介を人間の体としているため、死因がエグめになっていることを申し添える。
ストーリーと結末
以下は完全なるネタバレ。
- 冒頭で2人が貞子の呪いで死亡
- 夏美が貞子の呪いにかかる
- 雑貨屋の店員が貞子の呪いで死亡
- 鈴花が呪いの家の近くに越したあと、呪いの家に呼ばれるようになる
- 小学生4人、呪いの家で死亡
- 除霊を試みるも失敗、霊媒師・助手2人・森重教授が貞子に殺される
- 有里が貞子の呪いにかかる
- 経蔵登場、貞子vs伽椰子をぶちあげる
- 夏美、貞子に呪い殺される
- 鈴花、伽椰子の呪いにかかり、父と母が伽椰子の呪いで死亡
- 有里と鈴花が呪いの家で呪いのビデオを再生
- 貞子vs伽椰子のプロレス開始
- 結局、勝負がつかない、作戦失敗
- 裏庭の井戸に施した封印で貞子と伽椰子を封じ込める作戦に出る
- 貞子と伽椰子をぶつけた結果、両方の特性を備えた最強の存在が爆誕
- 経蔵が衝撃波で死亡
- 有里が集合体に飲み込まれて死亡
- 鈴花が集合体に襲われて死亡・・・する直前で映画終わり!
ーー
最終的に貞子も伽椰子も消えるには消えたけど、融合してさらに恐ろしい強烈な呪いとなってしまった・・・という結末。まぁ、このどちらかが勝つという結末は、ありえなかったとも言える。結局、このあとはどうなったのか不明。察するに、世界中に振りまかれた呪いが蔓延して人類は未曽有の危機に陥り、そこで現れた救世主が最強の呪いと対峙する・・・こんな結末くらいしか思い浮かばない。もしくは、インターネットで配布した呪いは無効で、貞椰子(さやこって読めばいいかな?)の呪いと地道に戦っていく続編を作るのか。このあとはどうなっていくのでしょうかねぇ。
とりあえず、貞子も伽椰子もそれぞれで癖や強さを持っており、この双方をぶつけても勝負はつかないんだよ!という、両方のファンを納得させるような結果で終わっているのが良いのかもしれない。ま、どちらも豪華なホラーシリーズで、この2つが共演できたということは、それだけでも十分に価値がある。
怖かった?
ツイッターでは「怖かったぁ」などという感想が飛び交っているようだが、僕はストーリーを把握しようとつぶさに観ていて、いつのまにか終わった感じ。観覧客もそれなりにいたけど、悲鳴の類は聞こえてこなかった。
ホラー描写についてはしっかり作られているなとも思うし、怖がりの人を揺さぶるには十分なクオリティではあった。あと、時折大きな音がして「ビクッ」となることも多々。トシオの「ギにゃ~~~~!」がビックリする。
「貞子」や「呪怨」と比較すると、恐怖シーンまでのプロセスが駆け足なので、恐怖の心理を引き起こすための引っ張り、日本ホラー独特のテンポというのは今回では見られなかった。だが、それを補って十分なほどに恐怖成分は含有できたのではあるまいか。怖がりには十分に「怖い」作品に仕上がっているだろう。
貞子と伽椰子が「走っちゃった」
あの二人、基本的には肩を不気味にいからせてにじりよったり、這い寄るのが基本なのだけど、ラストシーンで貞子と伽椰子がなんと「短距離走の如く」走ってしまう。場面は有里が自殺を意図的にしようとして貞子と伽椰子をおびき寄せるシーンなのだけど、この時に有里との間合いを詰めてにじりよった彼女らは「ザザザザッ!」と走ってしまうのだ。貞子はダッシュ、伽椰子は四足で這いつくばり奪取。おいおい、早いな・・・君ら、こんなに早く動けるのか?これではもし走って彼女らから逃げようとしても、このスピードで追われることが解ってしまったではないか。ただでさえ呪力が半端じゃないのに、機動力まで有するとか最早反則だろう。バイオハザードで走るゾンビに初めて遭遇した時のショックくらいショックだったわ。
以上、『貞子vs伽耶子』の感想でした。