鈴木大介が著した「最貧困女子」を読んだが、それはそれは重たいテーマだった。
性風俗の闇を描く
本のタイトルからして「どうせ、低収入女性のノンフィクションか何かでしょ?」と思われる方も多いかもしれない。
だが、この本で描かれているのはそんな稚拙な言葉で表せられるものではない。
日本の風俗の闇がリアルに描かれているのだ。
貧困に陥る要因
まず初めに、著者は、人は低所得に加えて「3つの無縁」「3つの障害」から貧困に陥ると説く。
「3つの無縁」
- 家族の無縁
- 地域の無縁
- 制度の無縁
「3つの障害」
- 精神障害
- 発達障害
- 知的障害
タブー視されがちなこれらの要因を正視し、具体例を挙げて解りやすく説明している。
なぜ行政に頼らない貧窮者がいるのか
次に、実際に取材をした女性のケースを紹介しつつ、どう見ても生活保護対象のようなぎりぎりの生活をしているにも関わらず、自治体を頼らずに頑張ってしまうのか。
それを克明に描いている。
私は今まで、何かに思いつめて最悪の決断をしてしまうような方をニュース等で見るたびに「馬鹿だな、保護なりなんなり、行政に頼ればよかったじゃないか」こんなことを考えていたのだが、この本を見てから見方が変わった。
「あぁ、この人は、どうしようもなかったんだな」と思うようになった。
家出少女が性風俗の世界に入っていく過程
皆さんは、家出少女たちが都市部へ行った後、どうなるかご存じだろうか?
ここでは、複雑な家庭環境、地域支援との親和性が低いがゆえの家出、都市部での「スカウト」たちの存在などを説明している。
大変生々しい話ゆえ、読むときは覚悟が必要かもしれない。
風俗の3形態「ワーク系・財布系・サバイブ系」
それぞれの特徴と、中でも「サバイブ系」が貧窮度が高く、闇が深いことを解説している。
さらにその中でも小分類的な体系図が示されており、非常にわかりやすい。
結語
あまりにも本書の内容がリアルすぎて、引用が難しかったために中途半端な書評になってしまった。
この本を見れば、性風俗に身をやつす女性に対する見方が大きく変わると思う。
そして、その闇の世界を垣間見るだろう。
今まで見えていたものがいかに表面的であったかを痛感する。
こういった闇の部分をしっかりと世間が認知し、貧窮する「最貧困女子」を可視化することで彼女たちを救う具体的な議論が進むと考える。
どんなに痛々しく、目を伏せたくなるような現実でも、それを無きものにはできない。
最後に、作者の言葉を引用して締めとしたい。
恋愛、失敗、孤独、貧困。繰り返すほどに傷は深まり、人生の選択肢は狭まっていく。これが僕が取材してきた「家のない少女たち」の典型的末路だった。
第5章 彼女たちが求めるもの より