書籍「スクールカーストの正体」分類される8タイプの中学生 - ポジ熊の人生記
前回の続きを書く。
現代の中学校は、コミュニケーション能力(自己主張力・共感力・同調力)の差により、8つのタイプに分類できると著者は提唱している。
今回は、この8つのタイプの特徴と、スクールカーストの決定要因を図で表す。
※なお、前回の記事をご覧になっていない方には、まずリンク先から見ていただくことをお勧めしたい。
- ①スーパーリーダー型:自・共・同(万能)
- ③孤高派タイプ:自・共
- ④人望あるサブリーダー型:共・同
- ⑤お調子者タイプ:同
- ⑥いいヤツタイプ:共
- ⑦自己チュータイプ:自
- ⑧何を考えているかわからないタイプ:無
- スクールカーストの決定要因(図)
①スーパーリーダー型:自・共・同(万能)
このタイプは、クラスに一人いると教師による学級運営が格段に楽になる。
教師の生徒への縦の力を、このスーパーリーダーが横の力でうまく分散することによって、クラス運営がかなり安定する。
最近はこのタイプの生徒が少ないらしく、250人~300人規模の学年でも1人~2人程度しか存在しない。
②残虐リーダー型:自・同
かつての不良少年や番長ではなく、むしろスポーツ部などに所属して花形選手になる生徒も少なくない。
しかも、成績が優秀な者も珍しくない。
他人に対する<共感力>が乏しいため、他人をいじりながらコミュニケーションを図る人間関係を紡いでいるうちに、悪意のないいじめに近づいていくというケースが多い。
ここに<同調力>を持つ「お調子者タイプ」(後述する)が同調し、集団いじめに発展する。
※著者は、この「残虐リーダー型」という名称に対しては、根っからの悪党であるとかいうわけではない、ということを断言している。
この記事を見た読者の方々も、このことを覚えておいて頂きたい。
③孤高派タイプ:自・共
自分を持ち、他人に優しく、周りの調子に合わさないタイプ。
同じ趣味のあう者同士で細々と交流し、自クラスに関わらず交流することが多い。
比較的無口なことが多く、自分に無関係なことには口を出さない。
能力が高いため、残虐リーダー型生徒からも一目置かれる存在になり、いじめの対象にはなりにくい。
④人望あるサブリーダー型:共・同
教師から「いい子」と評価されるタイプ。
家庭環境が良く、経済状態も安定している場合が多い。公務員や中堅企業以上の安定した収入を得る両親を持つ。
母親は専業主婦である場合が多い。
(リアルな話だが、著者が何千人以上と接してきた中学生からのデータなのだろう)
成績は中の上で冒険心がなく、学校文化によく馴染み、先生の言うことを聞く。
まさに「いい子」。
中級程度の難易度のリーダーは努めるが、自己主張力が乏しいために、学級全体をけん引したり、カリスマ性を持ったリーダーシップはとれない。
他人からの指摘やアイデアを受けると、悩んでしまうこともある。
残虐リーダー型生徒にいじられても軽く受け流し、集団のノリに合わせる<同調力>も持ち合わせていることから、いじめの対象にはなりにくく、学級内でもある程度の地位を占める。
⑤お調子者タイプ:同
生徒の主流派であり、最大の割合で存在する。
自分で何かを進めることはないが、その場の空気を察知して自らの立ち位置を決める。
時代に流されやすい生徒ともいえる。
学級内では自然と多数派を形成する。
スーパーリーダ型生徒がいる場合はその生徒に従って学校文化に馴染んだ行動をとる。
しかし、残虐リーダー型生徒が力を持っている学級集団ではその生徒になびく傾向がある。
この場合、教師が残虐リーダー型生徒を抑えられない場合は、学級崩壊に中心的な役割を担う生徒がお調子者タイプから現れる場合がある。
多数派を占めるのがこのタイプであるため、彼(彼女)らを学校文化にどう馴染ませるかが、学級運営の肝になる。
⑥いいヤツタイプ:共
優しく大人しい。
成績はピンキリ。
人前には一切出ない。
地道に学校生活を送り、教師からは好感を持たれる。
逆に手がかからない生徒であるため、放っておかれる危険性もある。
悩みを誰にも打ち明けられない生徒は、自家中毒のように不登校傾向になることもある。
オタク文化との親和性が高く、スクールカーストは決して高くない。
残虐リーダー型生徒やお調子者タイプから見ると、「悪い奴ではないがトロくさい」とみられることが多く、いじめ被害のリスクがある。
教師の力量が低いクラスでは「いじり」の対象となりがちである。
⑦自己チュータイプ:自
とにかく自己主張が大きい。
周りのノリにも合わせない。
他人の気持ちを理解しない。
趣味・嗜好・立場の正当性のみ主張し、周囲からはワガママに見られ嫌われる。
教師からも指導を受ける場合が多いが、自分でなぜ指導を受けたかも理解できず、集団に馴染むことが難しい。
オタク文化と親和性が高い。
多動性の発達障害を持つ子も少なくない。
周囲との関わりの薄さから、不良への道を歩み、残虐リーダー型生徒へ変貌する場合もある。
新学級で、まずいじめの対象になるのはこのタイプ。
ただし、残虐リーダー型生徒ともお調子者タイプとも正面から闘うので、トラブルを起こしやすい。そ
れで指導を受けても自分の非を認めないため、いじめる側も「面倒なやつだ」と避けるようになる。
そして徐々に孤立感を深めていく。
いじめ被害リスクの非常に高いタイプである。
⑧何を考えているかわからないタイプ:無
著者は、その名称「何を考えているかわからない」とのことから、解説すること自体が論理矛盾だと、まず述べている。
それを前提に、教師としての立場がありながら、ギリギリのラインでこのタイプを解説してくれている。
発達障害、多動系や自閉系の傾向を持つ子供がここに含まれていることを暗に示している。
こういった子供たちが「普通の子」として学級集団に所属する限り、周りの子たちは「何を考えているかわからない子」「自分たちとは違う子」としてしか見ない。
それがいじめのターゲットとされたり、人間関係トラブルを頻繁に起こす。
その子供たちが特別であることを周囲に理解させることができれば、周りはその子たちをいじめのターゲットにしなくなる。
しかし、学校に呼び出されてそういった「診断」を受けることを勧められた親が「うちの子を排除するのか」と憤ることが多い。
だが、学校側は排除が目的ではなく、その子を「守る」ことが目的なのである。
こういった子供たちへのいじめは、いじめる側を指導することでの制御が難しい。
だから被害者側を守る方策を取らざるを得ない。
スクールカーストの決定要因(図)
著書内の図を書き起こしてみた。
これを見ると、コミュニケーション能力がいかにいじめへの被害リスクに影響しているか良くわかる。
特に顕著なのは「同調力のなさがいじめを生む」という事実だろう。
同調力がなくてもいじめられないのは、実力のある孤高派のみ。
厳しい世界である。
以上、8分類の生徒たちを、自分の言葉でまとめてみた。
さらに、決定要因を図示した。このセクションの最後に、著者が添えた言葉があるので原文引用で載せておく。
読者のみなさんのなかには「ちょっと決めつけが過ぎるのではないか」との感想をもたれた方も多いに違いない。もちろん、実際の生徒たちはこんなに単純に分類できるものではないし、これらの複合的な要素をもつ生徒たちがかなりいるのが現実だ。しかし、こうした分類基準をもっているのともっていないのとでは、教師の指導に雲泥の差が出る。指導の的確さにかなりの影響を与えることになる。その意味で、無理を承知でそれぞれの典型を分析してきた。
第1章 スクールカーストといじめ被害者リスク より
私は、この著者である堀博嗣氏の言葉が、全てを物語っている気がする。
この本は、教職に就く者は特に読むべきものだと思う。
問題の大きな流れを知っておけば、小さな問題に腐心することなく大局的な問題解決視点を持つこともできるだろうし、何よりこの現実を知っておくべきだ。
第3章、第5章では、教師としてどのように彼らのいじめに対応していくべきかを、具体例を交えて教えている。
この部分だけでも、知っているのと知らないのでは、いじめへの対応力に雲泥の差が出るのではないか。
教員ではない私から見ても、そう思わせる内容だ。
わずか760円の投資でこれだけの知識を得られるのは素晴らしいことである。
教員に限らず、社会人も、学生も、ぜひこの本を購入し、実際に見てほしい。
中学校ではなくとも、これらスクールカーストやいじめへの対応については、高校、大学や仕事場でも十分に通じる部分も多々ある。
この本は、現代におけるコミュニケーションへの大きな問題提唱をしている、大変読みやすくありがたい本なのである。
久々に良書に出会えたことに感謝します。
以上です。
管理人もいじめを受けた経験があります。
みんな、負けるな。