書籍『スクールカーストの正体』は凄い。
堀裕嗣が著す内容は、過去の中学校時代を振り返り、「あいつはこのタイプだったな」であるとか「自分はこのタイプだったのか」などと再認識せざるを得なくなる。
実際に教師として働いている(現役)経験を活かして、生徒たちを分類し、そこからスクールカーストが何たるかを論じている。
読めば読むほどに引き込まれる当書籍の内容のうち、今回は生徒の分類と、そこから発生するスクールカーストについて説明したい。
スクールカーストとは?
著者曰く、言葉自体が世に出だしたのは2000年代の半ばぐらいではなかったか、とのこと。
出所は不明であるも、次第にインターネットで話題になり、社会学系論者の幾人かが取り上げ始めて、米倉涼子の「35歳の高校生」というドラマで爆発的に認知された。
私はこのドラマを見ていないため、これでスクールカーストの認知が一気に広まったことは全く知らなかった。
2010年頃から学校教育に携わる者なら無視できない言葉になった。
なんと、それくらいの年代から、「俺、カースト低いから」や「あいつはカーストが高い」などと生徒自ら使うようになったとか。
これを見て「世も末だ」と思ったが、しかし、これが現在の中学校の現実なのだろう。
スクールカーストには流動性がない
大人は仕事をしていても逃げ場所があることが多い。
教員を例に挙げると、職員室で嫌な教師がいる。一緒にいると非常に不愉快であり、ストレスが溜まる。
しかし、授業のために職員室を出ている間は、「逃げる」ことができる。
場合によっては上層部に不満を述べて異動希望を出すこともできる。
しかし、生徒の場合はそうはいかない。
少なくとも1年間は、同じ教室で、同じクラスメイトと時間を共有しなければいけない。
そんな中でスクールカーストなどの構造からいじめを受ける立場になった時に、長期的に見てもその受けるストレスは計り知れない。
この流動性のなさが問題をさらに深刻化させているらしい。
地域性
これも読んで「なるほど」と思わされた部分だ。
都市部などの比較的規模が大きい地域の学校では、コミュニケーション能力の上下でカーストが形成されやすい。
地方では喧嘩の強さや女生徒との性的交友経験が豊富かどうかがバロメーターとなり、「不良」がカーストの上位になりやすいそうだ。
これには明らかな相関性があると筆者は述べている。
その根本にあるのは「性」らしいが、これに関しては書籍を見てほしい。
大変興味深い考察が記してある。
スクールカーストを構成する3要素
長くなったが、本題に入りたい。
スクールカーストを制するものは、ずばり「コミュニケーション能力」であるという。
これが高いものが必然的にカーストの上位となる。
著者は森口朗『いじめの構造』を参考に、さらにその構造を分析する。
以下にスクールカーストの3要素を挙げる。
自己主張力
自分の意見をしっかり主張する・他人のネガティブな言動や態度に対して戒めることができる能力。
共感力
他人に思いやりを持つ・立場や状況に応じて考えることができる能力。
同調力
場の空気に応じてボケたり突っ込んだりして盛り上げ、明るい雰囲気を演出する能力。
生徒のタイプ別(8分類)
型の右に示す「自」などは、「自己主張力」を持っているの意である。
記載のないものはそれを持っていないとして見てほしい。
①スーパーリーダー型:自・共・同
②残虐性リーダー型:自・同
③孤高派タイプ:自・共
④人望あるサブリーダー型:共・同
⑤お調子者タイプ:同
⑥いいヤツタイプ:共
⑦自己チュータイプ:自
⑧何を考えているかわからないタイプ:無
カースト順位
1位:①
2位:②・③・④
3位:⑤・⑥
4位:⑦・⑧
いじめ被害リスクのあるもの
被害リスク中
⑥いいヤツタイプ
⑦自己チュータイプ
被害リスク大
⑧何を考えているかわからないタイプ
以上が分類といじめ被害リスクについてだ。
これは空想などではなく、実際の教育現場で起こっているカーストという現象を文章化して分類したものだ。
これらのどれかに当てはまるということもなく、色々な要素を複数包含しているのが現実だろうが、今思い返してみても、この分類は非常にわかりやすく、納得できる。
⑤のお調子者タイプを考えてみてほしい。
このタイプはその場が明るく楽しければ、明るく振る舞えるのだが、②の残虐的リーダーがいじめを始めると、その同調力から彼らもいじめに加担してしまう。
これは最近、聞いたことがないだろうか。そう、「キョロ充」と呼ばれる人間のことだ。
常に周りの顔色を伺い、強いものに巻かれて同調する。
まさにこの⑤そのものではなかろうか。
この⑤がいじめに同調することで、いじめが深刻化することがわかっている。
さて、今回はここまでにする。
次回は
「スクールカーストの正体」8分類の詳細と決定要因の図 - ポジ熊の人生記
各分類の生徒の特長について述べ、それを図にしてわかりやすく説明してみたい。