映画、観てきましたよ~!
小説とは違ったテイストで映画は映画で楽しめる感じです。
今回は作中にちりばめられた謎の伏線を解き明かしつつ、感想を述べたいと思いますので、どうかごゆるりとお過ごしくださいませ(^^)/♪
ストーリーざっくりネタバレ
お時間のない方はこちらをどうぞ!
①敦子と由紀の仲睦まじい描写→敦子は左足を引きずっているが、実はそれは演技だという描写→続いて敦子がグルチャで虐められる
②敦子が登校すると、自分の荷物棚に経血で書かれた「死ね」というナプキンを発見して過呼吸→その後由紀に保健室で救いの言葉をかけてもらう。由紀は認知症のおばあちゃんが家にいて苦しんでいる、という描写あり
③国語教師の小倉が由紀の書き上げた『ヨルの綱渡り』を盗み、小倉が盗作で賞を獲得して自慢する→由紀がそれに怒り狂う
④敦子は『ヨルの綱渡り』を目にして、由紀が自分のことをネタに嘲笑しているという誤解を抱く(過去の剣道の一度の失敗で没落した栄光の比喩を見てしまったため)
⑤由紀が図書館で小倉の盗作が載った本を引きちぎる、それを見ていたサイコパスの男の子と知り合いになる(小説では「牧瀬」という名がついているので以下「牧瀬」とします)
⑥由紀が小倉のノーパソを盗んで中身を見る、小倉とセイラという女子高生の仲睦まじい(キスシーンあり)動画を発見、由紀が小倉のノーパソから生徒の成績表を故意に流出させる(この時にセイラとの関係も流出させた?)
⑦小倉失脚→さらに女子高生との関係も噂で流れる→小倉自死
⑧紫織という転校生が入校してきて、敦子と由紀に接触し、「友人の死体を見た」と打ち明ける→由紀も左手の怪我はおばあちゃんにやられたものだと打ち上げる→それを聞いた敦子はそんなこと初めて知ったとショックを受ける→由紀と敦子の仲は疎遠に。
⑨紫織と敦子は共謀して電車で中年男性に対して痴漢冤罪を繰り返し、金銭を得る(敦子は乗り気ではない)
⑩夏休みに突入。紫織の話を聴いて由紀は「人の死ぬところを見てみたい」という思いに駆られ、病気を患った子供たちに絵本を読み聞かせるボランティアに参加する。敦子は老人ホームでボランティアを始めるが、敦子側で「死を見てみたい」という明確な動機描写なし(ここが小説との大きな差)
⑪由紀は第1回目の指導者で岡ちゃんというおばちゃんの方針と合わずにボランティアを辞めてしまう。そこで2人の男の子(タッチーと昴)と知り合い、仲良くなる。
⑫敦子はボランティアでたかおたかお(苗字も名前も同じ読み)のおっさんと知り合う。最初は不愛想だったおっさんと、少しずつ心を通わせていく描写。老人ホームに由紀の認知症になったおばあちゃんが入居しており、大福を喉に詰まらせたおばあちゃんを敦子が救う。
⑬由紀はタッチーから、昴の命が残りあとわずかで、それまでに昴の父親に合わせたいから病院に連れてきてくれと依頼される。元の勤め先に聞いて回った際に、中年のおじさんから、情報の見返りに夜に一人で指定された場所へ来るように言われる。牧瀬と共謀して中年のおじさんの下心を逆手に取り、情報をGETする。その後、牧瀬とは絶縁する。
⑭敦子はおっさんが『ヨルの綱渡り』の話をし出したので、持っている雑誌を見せてもらい、そこで由紀の敦子を大切に想う気持ちに気が付く。
⑮由紀がおっさんを病院に連れていく。そこには敦子もいる。昴におっさんを引き合わせると、実は昴とタッキーは名前を入れ替えて由紀をたばかっていた。タッキーはおっさんが痴漢で捕まって母親がおかしくなったことに恨みを抱いていて、復讐のためにおっさんを病院へ読んだ。持っていた果物ナイフでおっさんは刺される。殺される前に敦子がそれを阻止し、発狂しかけた由紀を連れ出して病院の外へ駆け出す
⑯町が見渡せる丘で由紀と敦子がそれぞれの想いを打ち上げて仲直り。
⑰紫織が遺書を全生徒にメールで発信して自死(合間に中年のおっさんがわいせつ物を押収され逮捕される描写あり、それが紫織の父であった)→紫織が自死した現場にはセイラと仲良く自撮りした待ち受け画面のスマホが映し出される
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いやはや、かなりざっくりと解説したつもりでしたが、ここまでのボリュームになるとは思ってもみませんでしたよ(-_-;)それだけ複雑なストーリーだったということでしょう。いくつかの項目が実際の流れと前後するかもしれませんが、概ねこれであってます!
謎解き
敦子と由紀はなんで人の死が見たかったの?
敦子は日本一の剣道の腕前を持ちながら、いちどの失敗で挫折し、虐めも相まって人生がわからなくなった。
由紀は幼いころから祖母に虐待されて、地獄を味わい消えたかった。
それぞれ立ち行かない現状の中でお互いの友情が揺らいだ時に、何気なく「人が死ぬのを見たら、何かがかわるかも?」という興味本位というか好奇心のようなものがあったのだと推察します。
思春期特有の拗らせというか、そういうものに複雑なトラウマや背景が絡まり合って醸成された歪な欲望、とでもいいましょうか。
結局、由紀も目の前でおっさんが刺された修羅場を見て自分の恐怖がフラバしてるし、敦子も大福を喉に詰まらせたおばあちゃんに「死なないで!」と必死に助けている。
「人の死が見たい」なんていいつつ、命の重さというものを実体験から身体に刻んだ結果となった。落としどころはここでしょうね。
ヨルの綱渡りって結局なんだったの?
由紀が敦子に対して送った最大級のエールを、自分の文才で表現したもの。友情の塊です。
敦子は剣道の失敗で挫折して、かつての明るい性格が消えてしまった。由紀はそんな敦子に「綱渡りなんかじゃない、夜が明けたらきっと笑えるよ」って小説の中で語っているんです。
敦子が最初、由紀が自分を嘲笑していると誤解してしまった原因は、小説の冒頭しか見てなかったから。そこには、剣道で失敗した時の跳躍が比喩的に書かれていたのですね。だからギクシャクしてしまった。
それを最後に見事に回収しています。
小倉と紫織と中年おっさんとおっさんの伏線回収
- 小倉とセイラは肉体関係
- セイラと紫織は親友
- 中年おっさんは紫織の父親
- おっさんは紫織に痴漢冤罪で陥れられた過去あり
- おっさんはタッチーの父親
まずこれが抑えておくべき関係です。
こう見ると紫織がかなりにキーパーソンになってますね!
次にこれら関係が紡いだ物語の伏線回収劇です。
- 小倉は由紀の復讐でセイラのことがバレる
- セイラはそれを受けて自殺
- 小倉も自殺
- セイラの自殺で紫織が歪み始める
- 中年おっさんがわいせつ物を集めたり女子高生に汚ない下着を洗わせるなど危ないことをする
- いよいよ紫織の闇は広がる
- 紫織は親友を殺し、さらに汚い父親を見て「中年男性」というものに嫌悪感を抱いて痴漢冤罪の復讐を始める
- その被害をおっさんが被る
- 結果、おっさん一家が崩壊してタッチーも復讐に燃える
- おっさんはタッチーに刺されるが、最後は仲直り
- 中年おっさんがわいせつ物を押収されて逮捕
- 紫織も闇が限界にきて自死
こんなところでしょうか。
なお、敦子はおっさんと出会うことで物語に重要な変化をもたらします。
先述しましたが、おっさんが『ヨルの綱渡り』を知っていたことですね。さらにそれを指して「君のことが本当に大切なんだね」って教えてあげたり。やるじゃん、おっさん!
タッチー&昴のところが良くわからん
由紀とタッチー&昴が出会ったとき、彼らはそれぞれの名前を入れ替えて偽っていた。それは何故かというと
由紀にタッチーの父親を病院まで連れてくるよう依頼する際に、この方が由紀が聞いてくれそうだという計算があったから
なのですね。なんという狡猾さでしょうか(笑)
なお、父親を呼び寄せた理由は「復讐」です。
少し病弱に見える方が悲劇のヒーローに見える、という戦略ですよ。ここらへんは小説版が詳しいので、後ほど紹介させていただきます。
小説版のすすめ
小説版の特徴は
- 由紀が映画よりずっとサイコパス
- 敦子がもっと卑屈でリアル
- 各セクションの描写が映画の比じゃないくらい細かい
- 感情の揺れ動きなどの機微がつぶさ
簡単に説明するとこうなります。
間違いなく、小説版も見ておいた方が良いでしょう。
映画を観て「なにこれ?」って感じる部分は、小説で全て解説してくれます。
小説を見て「よくわかんね」って思った人は、映画を観ることで全てが補完されるでしょう。
特に後半の怒涛の展開では「え、なになに、なにがどうなって・・・えー!?」的なエクストリーム伏線回収が繰り広げられるので頭が混乱するかと思われますが、そこを映画でしっかりとまとめてくれる感じ。
おわりに
映画は間違いなく楽しめますよ。
色々とすくわれない部分も多々ありますけど、結局は因果応報で人の命は粗末にするもんじゃないし、親友を大切にして生きづらい世の中を生きていくヒントがいっぱい詰まってますから♪
以上!