ポジ熊の人生記

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妻が願った最期の「七日間」 感想・書評

2018年3月9日付、朝日新聞朝刊の投稿欄に掲載され、数日間で約19万人の「いいね」とともにシェアされた「妻が願った最期の「七日間」」

それが書籍になったものが本日上梓され、それを読んだ管理人が感想を書きます。一部あけすけに書きすぎて感情を害される方もいらっしゃるかとは存じますが、素直に書かせていただきましょう。

詩「七日間」

神様お願い

この病室から抜け出して

七日間の元気な時間をください

 

一日目には台所に立って

料理をいっぱい作りたい

あなたが好きな餃子や肉味噌

カレーもシチューも冷凍しておくわ

 

二日目には趣味の手作り

作りかけの手織りのマフラー

ミシンも踏んでバッグやポーチ

心残りがないほどいっぱい作る

 

三日目にはお片付け

私の好きな古布や紅絹(もみ)

どれも思い出が詰まったものだけど

どなたか貰ってくださいね

 

四日目には愛犬連れて

あなたとドライブに行こう

少し寒いけど箱根がいいかな

思い出の公園手つなぎ歩く

 

五日目には子供や孫の 一年分の誕生会

ケーキもちゃんと11個買って

プレゼントも用意しておくわ

 

六日目には友達集まって

憧れの女子会しましょ

お酒も少し飲みましょか

そしてカラオケで十八番を歌うの

 

七日目にはあなたと二人きり

静かに部屋で過ごしましょ

大塚博堂のCDかけて

ふたりの長いお話しましょう

 

神様お願い 七日間が終わったら

私はあなたに手を執られながら

静かに時の来るのを待つわ

静かに時の来るのを待つわ

 

4p~7pから引用

 

以上は、小腸癌末期で闘病中に故・宮本容子さん(以下「容子さん」)が、「家に帰ったら何がしたい?」という夫・宮本英司さん(以下「英司さん」)の問いに答えたものを英司さんが書き留めたもの。これを主体に朝日新聞の朝刊に投稿したところ、取り上げられて瞬く間にシェア・有名になった、と。

 

英司さんは奥さんが亡くなったことを忘れたくない、もっと多くの人に容子さんが生きていたことを知ってほしい、その証をこの世に残したいという想いから、新聞へ投書したり此度のような書籍化に積極的になった、とのことですので。

 

僕が当サイトで取り上げることもまた英司さんの本懐にそぐわぬものである、と信じてこの「七日間の詩」を始めとした書籍の内容をところどころかいつまみながら紹介させていただく次第です。

 

書籍の内容

内容は冒頭の詩に始まり、容子さんと英司さんの学生時代の馴れ初めから結婚、出産、マイホーム取得までの経過を、二人の手紙のやり取りという形で紹介しています。

 

また、途中からは容子さんの独白(生前は英司さんが知り得なかった部分)で、病気により生死の葛藤、未練、残す家族への心配、夫への愛情などが綴られるものになっています。

 

終盤では英司さんの想いが綴られています。容子さんの死を、また全面的には受け入れることができない、ということが切々と伝わものです。読んでいて辛くなる方もいるかもしれません。それだけ、この夫婦は信頼と絆で結ばれていた証左なのですけれども。

 

それでも、書籍の最後には容子さんの面影を抱きつつ、これからの人生を前向きに生きようという英司さんの覚悟のようなものも伝わってきて、「ああ、なんとか、前を向いて進めそうだな」という安心感を持たせてもらえる。

 

馴れ初めから結婚、出産、そして闘病。夫婦が歩む一般的な道のりの中で、お互いに愛し合い確実に信頼を築き上げていく過程に「なんて素敵な夫婦なんだろう」以外の言葉が見つからない次第です。はい。

 

感想

なかなかこんな美談はない

このご時世、やれ「旦那はATM」だとか「嫁はぐうたら」だとか、夫婦間が分断されるような風潮をひしひしと感じる。個人的にだけど。「夫婦の絆」系の話は、きれいごととしても、風に1ミクロンも乗って流れてこない。僕の観測範囲だけかもしれないけれどねぇ。

 

それと相まって僕個人としての結婚失敗経験も、大いに手伝ってこういう夫婦の究極の美談みたいなものは、SFに等しいくらいの絵空事なんじゃねえの?と思わされる。

 

いやべつに英司さんと容子さんの愛は嘘じゃなく本物と思うよ。それを否定しようとは思わん。ただ、この物語は偶然が作り出した芸術に近いものに感じる。

 

例えばの話。これ、どっちかがAC(アダルトチルドレン)で心に闇を抱えてみなさいよ。あっというまにダークネスストーリーの誕生よ?

 

幸運

英司さんにしても容子さんにしてもね、お互いに人間の出来た両親に育てられている模様。家柄も悪くないです。そんで、英司さん容子さんともどもが、人間ができている。もちろん、最初から社会の何たるかを知っているだとか経験値があっただとかそういう話をしてんじゃなくて、元々の質的に優れていた。

 

さらに偶然は続いて、英司さんと容子さんはお互いに好き合い、慮り、結婚するのが当たり前なんだ、くらいのフィーリングを実現している。プロポーズもいまいち曖昧ななかで、「これはもう結婚いがいあり得ない」というくらいの仲になっている。それだけ、相性が良かったというわけです。

 

英司さんも容子さんも努力した

さっき「偶然が作り出した」言いましたけど、ここにフォローを入れるのであれば英司さんも容子さんもお互いに相手のことを考えて愛していた。信頼していたんですよ。常に信頼し合っていた。もちろん、小さな衝突もあった、ということを書籍でも触れています。しかし、お互いの尊厳を傷つけるような決定的な攻撃を加えることはなかった。本当に好き会って、相手のことが大事で、それで信頼を築き上げることができたんです。これって、凄いことですよ。オートでこんなことは成し得ない。英司さんも容子さんも、少しでも手を抜いて自分を中心に物事を考えてしまっては、決して築けなかった信頼の城だと思います。

 

が!それでもなお、僕の持論は揺るがない。英司さんと容子さん。この二人の愛は、この二人だったからこそ紡ぎ得た壮大な夫婦愛のタペストリーである、と。こう断言させていただきます。英司さん、容子さん、あなたたちは凄い、ベストカップルだ!ブラボー!

 

相手次第では美談にならないルートあるよ

で、結局何が言いたいのかというと相手次第ではどんなに頑張ってもこのような信頼の城などは到底築けないということです。「えー、相手のせいにすんの?」とか言われちゃいそうですけど、相手のせいにするというわけじゃなくて、そういう相手を選んだ己が阿呆なんだよ?ってことを言いたいわけ。

 

どんなに一生懸命に頑張っても、認知を変えても、貢いでも揉んでも押しても引いてもどーーーーにもならないパーソナリティはこの世に存在する。嘘だと思っているあなたは、まだ出会ってないだけ。ブラックホールのような、光さえも吸い込む暗黒がこの世に確かに存在するということを、あなたはまだ知らないだけなんだよ。

 

だからさ、肝心なのはね。あ、ここ大事だから強調しておくよ。

相手を選ぶ目を養っておけ

ということです。

 

お互いに見初め合った英司さんと容子さんは、もともとの素質でお互いが素敵な人だなぁというのを本能的に知っていたのでしょう。だから、信頼を築き上げることができた。

 

外見や肩書で結婚相手を探す馬鹿ども

しかし、どうですか。特に最近の小童ども、オマエラこのとだよ。顔?年収?そんなもので、宮本さん夫妻のような信頼を築き上げる家庭を成立させることができますか?いわんや、相手がACだったら、あなたの努力だけでそれが成し得るかどうかおやってところですよ。

 

外見や肩書で結婚相手を探して、それで真の幸せ(信頼)を築き上げることなど不可能と心得よ。素晴らしい相手に巡り合うことができる、いや見つけることができる才能というのは、どうしたら身に付くのかというと、実は自分の内面を磨くことが一番の近道になるんです。

 

・・・長くなりそうなので、ここに譲ります。

www.pojihiguma.com

 

信頼の貯金の話

ここまでは「そもそも選ぶ相手を間違えたら地獄一直線」という極端な言説を唱えさせていただきましたが、反省も込めて「いやそんなことはない・・・と思う」と言わせていただこう。

 

英司さんの言葉を借りるとすれば

私は、容子が生きてさえいてくれれば、それでよかった。たとえ病院に行ったときにベッドで眠っていて私と会話ができなくても、生きてさえいてくれればよかった。たとえどんな状況であろうとも、生きていることが私の生きがいであり、幸せでした。

ですから、もし今、お互いを大切にできない人が目の前にいるなら、どうか考え直してください。もし、夫婦仲がいまひとつよくない人たちがいるなら、お互いに相手を大切に思ってみてください。お互いに受け入れられるようになればいいですね。

118p~119pから引用

 

「なればいいですね」というあたりが達観を感じさせる。

 

英司さん的には、生きてさえいてくれればそれだけでいいと思っているのに、世の中にはお互いに生きている同士の夫婦で仲が悪い事例が絶えず残念で仕方ない、というか贅沢?とさえ思っているのかもしれない。

 

確かにそうだ、もし心がけ次第で冷えかけた夫婦の絆が暖かいものに戻るのであれば、それは越したことがない。子供も親が仲が悪いというのは災害に匹敵する事態なわけで、お互いを想い合って受け入れられるようになれば最高だろう。ですので、この書籍を読んで「少しでも妻(夫)を大事にしよう」と心入れ替える人が1人でもいれば素晴らしいことなんじゃないかと存じます。

 

さっきも似たようなこと書いたけど、英司さんも容子さんも、信頼し続けて、想い合ってきたからこそ、こんな素敵な本が一冊出来上がる結果になったんだと思いますよ。大病を患って、先立たれてもなお、妻のために行動を起こそうと思わせるくらいの愛。素晴らしいじゃありませんか。旦那の退職金を半分GETして別れる熟年離婚の逆ベクトルっすよ。

 

ですのでね。現在進行形で妻や夫を対等な人間扱いせずに足蹴にしてゲシゲシやっている家庭には信頼の「し」の字もない修羅の老後が待ってるんですよ。そこんとこ、覚悟してください。で、願わくばね、お互いのことを想いあう機会を設けてさ、宮本さん夫妻に負けないくらいのハートフルで超仲睦まじいオシドリ夫婦を目指してほしいと思うわけさ。かなりハードルは高いけどね。

 

偉そうなこと言うても、管理人は結局ひとりの人生を選択しちゃったけど(笑)いやー、正直、英司さんや容子さんみたいに、誰かと一緒にいると安心して幸せだー、なんていう気持ちが微塵も理解できない。同じ屋根の下に他人と住むことへの難しさが強すぎて、とてもじゃないけど共感できねえのさ。最後の最後にすまんな。けど、見せてもらったよ。眩いばかりに愛し合い、信頼しあい、妻の闘病を支えて最後の瞬間まで傍にいて、別れたあとでもその存在を忘れられず焦がれて新聞やインターネット、書籍化にまで発展したこの真の愛を。見させてもらった。もうお腹いっぱいです。ありがとうございます。

 

容子さん、あちらの世界で、ゆっくり英司さんを待っていてあげてくださいね。ま、こんなこと言わなくても待ってるとは思いますけど。で、英司さん。容子さん亡くなって寂しいかもしれないけど、あっちの世界でまた会えるんだから、泣かないで元気に趣味に生きてよ。そのほうが容子さん、喜ぶと思うよ?うん。

 

 

まとまりのない感想でしたけど、このへんで筆を置きましょう。

 

みんな、これ読んで信頼のオシドリ夫婦を目指してね。僕は来世に期待するからさ。